TOP > 代表 西川の気まぐれ日記

2023 年 03 月 28 日 14:35

今、ここ、自分

 全国20代~60代の働く人に対して行われたアンケートでは、「あなたは仕事が楽しいですか」という質問に対して6割以上が「楽しい」と答えているそうです。楽しいと感じているときは、ハードワークも苦になりませんし、自分から学びにいこうともする。
 先日開催されたWBCの中でも、大きなプレッシャーがかかる場面でも、中心にいる大谷翔平選手が常に野球を楽しんでいる姿が話題になりましたが、本気で楽しむ姿勢は良い結果を生み出す確率が高くなるだけでなく、その姿勢が周りにも良い影響を与えていくものだと思います。
 ただ、大きなプレッシャーがかかる場面でなかなか楽しむという気持ちになるのは難しい。結果を出さなければと思えば思うほど気持ちが焦り、身体も心も縮こまります。
 数々の金メダリストのメンタルコーチをしているスポーツドクターの辻秀一さんは、この楽しむ心の大切さをアスリートに伝えている方ですが、どんな時も楽しむためのキーワードとして「今、ここ、自分」ということを教えておられます。これは禅の言葉ですが、取返せない過去を悔やんだり、まだ来ていない未来を憂いたり、人と比べて落ち込んだりすると、どんどん心が不機嫌になる。だからこそ「今、ここ、自分」を意識して取り組んでいく。大谷選手は、優勝という結果も大事にしていたと思いますが、世界一のレベルの選手が競い合う大会に出場できること自体に感謝し、楽しんでいる。まさに、「今、ここ、自分」の境地だったのではないでしょうか。
 もし、うまくいかなかったらどうしよう。あの人がうまくっているのに自分はダメだ、など不安になる時、怖くなる時は、心が「今、ここ、自分」から離れてしまう時かもしれません。「今、ここ、自分」を大切にすることが楽しむことの一歩目なのだと思います。ただ、そうはいってもなかなか自分の心を変えることは難しい。そんな時にアスリートが大事にしているのが自分が発する言葉や態度。大谷選手もそうですが、選手の多くが「楽しむ」「感謝している」「ありがとう」「おかげで」などという言葉を口にしています。「必ず勝ちます」というような言葉ではなく、今、ここ、自分に意識が向くような言葉を口にすることで心を整えていく。楽しむことの価値を知っているアスリートは、人や環境のせいにせず、自分で自分の心を作っているようです。

 仕事を楽しむ。夢中になる。まずは、この価値を知ることがいちばん大事なのかもしれません。

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2023 年 03 月 22 日 14:33

Fail fast(早く失敗せよ)

 目標を掲げて取り組んでいたのに達成しなかったり、仕事を抱え込みすぎてパンクしてしまったり、仕事をしていると上手くいかないことが時々発生してしまいます。失敗すると精神的にも辛いし、落ち込みます。だから、次は失敗したくないと思い、なぜ上手くいかなかったのか、どうすれば上手くいくようにできるかを考えて、次に挑戦をする。取り組みを変え、自分の向き合い方を変え、やり続けていく中でようやく成功する。
 スポーツにしても、ビジネスにしても、この繰り返しの中で、人は成長していくのだろうと思います。
そう考えてみると、失敗ということは、人が成長していくためには最も大事なこと。よく言われるように、失敗こそが、成長の原動力なのだと思います。だからよく「失敗を恐れずに挑戦しろ」と言われるのだと思いますが、失敗すると怒られたり、厳しく叱責されるという環境の中だと、失敗を避けるようになってしまいます。
 目標を低く設定したり、新しい挑戦を避ける。不安な道に進むより、正解がある道、安全な道を選ぼうとする。その道は、確かに失敗は少ないけど、考える機会も少ない。成長のためには、失敗のある道の方が良いように思います。

 ただ、いくら失敗が大事だと言っても、それを自分の「糧」にしなければ成長はない。「失敗を気にしない」と反省をしないで次に挑んでも同じ失敗をしてしまいます。失敗が大事というよりは、「失敗から何を学んだか」、教訓を得ることが大事であって、失敗後の「振り返り」がなければ、成長にはつながらない。一番大事なのは、ここだと思います。
 アメリカのシリコンバレーでは、「Fail fast」(早く失敗せよ)という言葉が良くスローガンとして使われているそうです。どのような天才でも100%成功する時代ではない。だからこそ、アイディアを実際に試して失敗し、そこから得た教訓をもとにまた新しい仮説を試す。その繰り返しを早く実行することが成功につながる。
 それがFail fastという標語の意味。変化が激しく、誰も正解がわからない時代だからこそ、失敗から学んでいくことが大事だと、この業界では失敗を推奨しているそうですが、どの業界でも大事なことではないでしょうか。

 失敗の連続は確かに苦しいことかもれませんが、そこで七転八倒してきた数年を振り返った時に、人生の充実感や自分の成長を感じることがあります。そうやって考えてみると、人生にとっても失敗は大事な経験であるように思います。

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2023 年 03 月 14 日 14:19

知・好・楽

 仕事の成果を上げる。生産性を上げる。いろいろな技術や方法があると思いますが、いちばんの方法は、仕事をする人がそれ楽しいと感じてやっていることではないでしょうか。今話題のワールド・ベースボール・クラッシックで活躍している大谷選手などのプレーを見ていても、勝とうという気持ち以上に、楽しんでやっているという雰囲気を感じます。この晴れ舞台を最高に楽しもうという気持ちこそが、最高の成果につながっているような気がします。

 論語の中に、「これを知る者は、これを好む者に如かず、これを好む者は、これを楽しむ者に如かず」(知・好・楽)という言葉があります。仕事に例えると、いから、仕事で成功するための知識を持っていても、その仕事を好きだという人にはかなわない。また、ただ仕事が好きだという人は、その仕事が楽しいと感じて取り組んでいる人にはかなわない、ということになるのでしょうか。
 確かに、楽しいことをする時は、傍からみると大変なことでも、本人は苦労と感じませんし、楽しいからこそ探求し、知らず知らずに創意工夫をしています。ただ好きだという以上に、楽しんでやることが、仕事の成果につながるということは間違いのないことかもしれません。
 ただ、仕事の成果につながるから、仕事を楽しみなさいと言われても、楽しいかどうかは自分次第。大谷選手も、誰かに野球を楽しめと言われて楽しんでいる訳ではなく、創意工夫し努力することが楽しいと自分が感じるからこそ打ち込んでいるはず。楽しむことは自分にしかできません。

 ただ、好奇心を持って知識を増やすこと、今、ここに集中すること、失敗を糧にすること、結果よりプロセスを大切にすることなど、仕事を楽しくするための手段はいくらでも紹介されていますが、それこそいくら知識を身に付けたとしても、楽しむことに意義を感じていなければ、長続きはしないのではないでしょうか。

 一度きりしかない人生の中で、起きている時間の大半を占める仕事の時間を楽しい時間にすることに自分自身が価値を感じるかどうか。どんな人生を歩んでいきたいか、そこが楽しむことの出発地点のような気がします。

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2023 年 03 月 07 日 11:57

お客様の声

 お客様の声に耳を傾けて商売をする。これは昔から言われ続けていることですが、「お客様の本音が聞けているか」と言われると、なかなか難しいことかもしれません。
 そもそも我々はお店で嫌な体験をしたとしても、わざわざお店に苦情を言うということはせず、「黙って去る」「そこで利用しなくなる」のが一般的です。

 いわゆるサイレントカスタマーというお客様です。統計によると、企業の対応で不満があった場合に「企業に対する申し出率」は27.5%。7割の人が不満をもったまま家に帰っているということになります。この人達は、不満が解決されていないので、その企業を利用しなくなる確率が高い。大切な既存顧客を失ってしまいます。それだけならまだしも、最近はその不満をSNSで「不満」を発信して広げてしまうこともあり、ほっておくと企業イメージが悪くなってしまいます。

 最近、こんな体験をしました。
 いつも利用しているお店に予約の電話をしたのですが、いつもならお店の人が出てくれるのですが、その日は音声ガイダンスに変わっていました。ガイダンスに従って予約をしていったのですが、本当に時間がかかり、途中であきらめてしまいした。人手不足の時代なのでしょうがないとはいえ、以前なら数分で終わっていた予約がこんなにも手間がかかるのかと、不満を感じました。しかし、この不満をお店に伝えようにも、お店にかけても出るのはガイダンスの音声。私の希望は伝わりません。その予約はせず、私は他のお店に行きました。この不満をあえて伝えるかというと、聞かれる機会があれば言いますが、あえてわざわざ言いにいくようなことはしないと思います。
 最近は、お客様が気軽に連絡できるように相談窓口を設けるなど、申し出しやすいようにされている企業も多くなっていますが、実際のところ「不満だが、苦情をいうほどのことではない」「そこまでやるエネルギーを使いたくない」というのがほとんどではないでしょうか。
 ただ、既存客が一人減ったのは事実。少子高齢化でどんどん顧客が少なくなっていく時代に、大切な顧客を失うことは大きなダメージです。

 顧客満足度の高いある会社は、こうしたお客様を少しでもなくしていくために、社内に「クレームは宝」と打ち出し、不満を伝えてくださるお客様を大事にしようと、苦情と向き合い、ひとつひとつを真摯に解決していくことを大事にされていました。顧客が少なくなる時代には、「わざわざ苦情・苦言を言ってくださる顧客」というのは、本当に大切なことを教えてくださる企業の先生のような存在かもしれません。
 ある調査によると、様々な技術革新で買い物の仕方や商品そのものは、大きく変化してきていますが、お客様の心理は、昔からそんなに大きく変わっていないそうです。
 「繁盛したければ、お客様の声を聴け」という言葉が改めて心に響きます。

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2023 年 03 月 01 日 12:47

AIと人間のホスピタリティ

 話題のAI、ChatGPTは、様々な質問に答えてくれるだけでなく、文章の作成から、要約、校正、小説や詩の制作までやってくれるAIですが、その正確性や使い方など、まだまだ課題があるとはいえ、これまで時間がかかっていた作業をこうしたAIが代行してくれると、仕事もより効率的になっていくはずです。こうしたメルマガなどもいつかChatGPTが書いてくれる時がくるかもしれません。

 外食産業ではタブレット注文があたり前になり、セルフレジのお店はもちろん、今後はレジすらいらないお店が出てくると言われていますが、人口減少による労働力不足の時代には、AIやロボットは不可欠な存在になっていくのでしょう。こうした時代の中で人間の仕事はどのようなものになっていくのでしょうか。 以前、臨機応変な対応、お客様の心に寄り添う対応など、「ホスピタリティ」(おもてなし)は人間にしかできないと言われていましたが、24時間どんな時でも質問に答えてくれたり、機嫌に左右されず、いつも安定して対応してくれるAIは、確かに臨機応変さや気配りは劣っているとはいえ、ある面、人間よりホスピタリティや顧客満足を提供できているとも言えます。
 ロボットも以前は無機質なものという感じがしていましたが、表情を変えたり、会話をするロボットと接していると愛嬌を感じることもあり、ロボットが人を癒すということも生まれています。
 ホスピタリティの分野まで機械やAIが活躍していくと人の仕事が奪われると心配になりますが、まだ、お客様の雰囲気や表情から気持ちを察知したり、その状況に応じて最善の対応を考えるということは機械にはできないと言われていますし、ロボットやAIがお客様との人間関係を築けるとは思えません。人間らしい気配りや人間力が、今以上に人に求められていくのだと思います。AIやロボットの対応は確かに便利で、良いことがたくさんありますが、お客様との絆をつくる顧客サービスの世界は、いつまでも人が中心になりそうですし、そうあってほしいなと思います。

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2023 年 02 月 20 日 18:07

お客様の立場に立つ

 お客様の立場に立って考える。お客様のニーズをつかむ。
 昔から接客においても、商品開発においても、お客様の側に立って考えて行動することが大事であると言われています。ただ、実際は「お客様のためになる」と思ってやったことが、すべて上手くいく訳ではなく、思ったよりもヒットしなかったり、「お客様のために」と考えたことが、逆に余計なお世話だと感じられてしまったというようなことが起こったりします。

 以前こんな話を聞きました。あるお客様のお店の「おもてなし」についての感想です。
 「お店に入った時、駐車場でスタッフがドアの前で迎えてくれるのは嬉しいんだけど、何となく早く降りろと言われているようで嫌な気になった」。
 お店側としたら、店舗で挨拶をするより、お客様の車の方まで行ってお迎えする方がお客様に気持ちが伝わると思われてやっている「おもてなし」だと思います。しかし、お客様の立場になってみた時、確かに目の前で待たれていると逆に気を使ってしまう。そんな気持ちもわかります。もちろん、これが「嬉しい」「気にならない」というお客様もおられますので、この接客がすべて悪い訳ではないはず。ただ、店側が「お客様のために」と思ってしたことと、お客様の感じ方がずれることは、よく起こっていることかもしれません。

 セブンイレブンの創業者、鈴木敏夫さんは、「お客様のために」と「お客様の立場に立つ」という考え方は違うと言われている経営者です。
 「お客様のために」という時は、どこか「過去の経験」をもとにしたお客様に対する思い、決めつけがあり、お客様がそれを良いと思われているどうかはわからない。「お客様のために」と言いながら、自分達のできる範囲でしか考えていないのではないか。どこかで自分達の都合を優先しているのではないかと言われています。
 「お客様の立場に立つ」ということは、あくまでもお客様の立場で見ることで、お客様のニーズから発想していくこと。もしかすると自分達にとって不都合なことでも実践していかなければならないこともある。だからこそ「お客様のために」ではなく、「お客様の立場に立つ」というお客様を起点にして考えていく。その重要性を従業員に伝えておられています。

 「お客様のために」という思いは悪いことではなく、人の役に立とう、喜んでほしいという姿勢は商売の上で大事なことだと思います。ただ何が良いかどうかはお客様が判断すること。その立場に考えてみないと間違ったことをしてしまいます。「お客様の立場で」と強く言われるのはそうした戒めだと思います。

 ただ、お客様からの目線で見るということは、意識しないとなかなかできません。鈴木敏夫さんも、実際に毎日、商品を試食し、土日でも消費者としてセブンイレブンを利用して、「お客様の立場に立つ」を実践されていたそうです。
 「お客様のために」と「お客様の立場に立つ」。つい、同じような意味で使ってしまいますが、良い商品をつくるためにも、お客様に喜んでいただく店にするためにも、やはり「お客様を起点に考える」ことが重要なポイントになるのかもしれません。

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2023 年 02 月 14 日 11:10

心の置き方

 「その日が、お客様にとっていい一日になればいいなと思って働いています」
 これは、以前、ある旅館を取材させていただいた時、朝のバイキング会場でお客様に声をかけ、いろいろとお世話をするスタッフの方がおられたので、インタビューをさせていただいた時にその方が仰った言葉です。
 自分の仕事は、単にバイキングでなくなった料理を補充する係ではない、自分は、お客様のいい思い出をつくる仕事をしているのだ、そんな風にとらえられて働いておられるその方の接客が心に残りました。
 同じ仕事でも、「今日もバイキング会場で料理の補充をするのか」と思うこともできますが、こんな風にとらえて働くこともできる。自分の仕事をどう捉えているか。心の置き方ひとつで同じ仕事でも景色は大きく変わっていくのだろうと思います。実際にその方は、足のご自由なご老人の方に料理を取り分けあげたり、ここでしか食べられない特別な料理をご説明されたりと、バイキング会場に来るお客様を笑顔にされていました。
 よく「CSが大事だ」と接客の技術や行動を改善していこうと「やり方」を見直すことがありますが、どれだけ接客のやり方を学んだとしても、その人がそれを「やらなければいけない作業」だと思ってやっている仕事と、「お客様にいい一日を過ごしてほしい」と思ってやっている仕事では、まったく違った仕事になってしまうと思います。

 世の中にはいろんな職業がありますが、考えてみればすべて同じことかもしれません。例えば、車を販売する営業マン。自分の仕事は「車を販売する仕事」だと思って仕事をするか、「その家族が幸せに過ごせる車選びのお手伝いをする仕事だ」と思って仕事をするか。車修理をするメカニックであれば、自分の仕事は「車を修理する仕事」と思って作業をするか、「お客様が不安なく、ずっと幸せに車を利用していただくための大切な仕事だ」と捉えて燃えて仕事をするか。自分が顧客ならどちらの人から買いたいか、頼みたいかと考えてみた時に、多くの人が後者の人に対応してほしいと思うのではないでしょうか。
 ただ、心の置き方は自分で決めるもの。仕事をどうとらええるか、自分自身がどうあろうとするかは、その人が決めるしかなく、他人がコントールすることはできません。どうせ仕事をするのであれば、自分の心が前向きになる場所に心を置いていきたいです。

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2023 年 02 月 07 日 14:07

やってみなはれ精神

 ここにきてだいぶコロナ禍も収まりつつありますが、この数年間、飲食や旅行などのサービス業の皆様は本当にたいへんな時期を迎えられたと思います。来店客がゼロになる、しかし大切な従業員を簡単に解雇する訳にはいかないという厳しい選択が迫られる中で、何とか業績を上げようと新しい取り組みに挑戦された方も多かったと思います。先日あるホテルの経営者にコロナ禍での取り組みをお伺いしましたが、料理の通販やお弁当の販売、団体にホテルを1棟丸ごとお貸しするプランなど従業員の皆さんとアイディアを出し合い、この数年間、必死に取り組まれたそうです。行ったものの中には全く売れないものなど、たくさんの失敗があったそうですが、その挑戦の中にはヒットし、今後の新しい柱に成長したものもあったそうです。コロナだからと尻込みをしなくてよかった、やってみることの大切さを痛感したと、その経営者が語っておられました。

 「やってみなはれ。やらなわからしまへんで」。これは、国産初のウイスキーを開発したサントリーの創業者、鳥居信治郎さんが大切にされていた言葉だそうです。
 入念な市場調査を重ねて開発した新車が売れなかったり、逆に思いもかけない売れ方をすることがあるということがあるそうですが、未来を確実に予測できることは少なく、何事も「やってみなければとわからない」ものかもしれません。
 サントリーさんが創業した戦後の混乱期や現代のコロナ禍など、誰も経験をしたことがないことが起こった時や、未開拓の分野に出る時は、誰も正解がわからない。だからこそ、「やってみなはれ」という歩き方が必要だったのでしょう。以前、新しい仕事をする時はPDCAではなく、まず行動から始める「D‐CAP」が大事だという考え方を教えていただいただことがあります。安全に関わることや大きな予算や多く人が動くような仕事は入念な計画をしなくてはいけませんが、初めてのプロジェクトや未知の分野の仕事をする時は、とにかく小さく始めてみること、そこから学び、改善していくという「D‐CAP」の方が良いのかもしれません。
 ただ、そうはいっても「まずやってみる」ということは、勇気がいります。責任の重圧や失敗した時の恐怖、未知の世界に飛び込む時は誰でも怖いもの。 「やってみなはれ、やらなわからしまへんで」と言えるリーダーでありたいなと思います。

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2023 年 01 月 31 日 17:05

心のこもった挨拶

 小売業やサービス業では、昔からお客様に挨拶をすることが大切だと言われています。
 「おはようございます。」「いらしゃいませ」「ありがとうございます。」とスタッフが元気に挨拶をしているお店は、活気を感じますし、顧客として気持ちがいい。挨拶を良くする店では、顧客が声をかけやすくなるので、ちょっとしたことでも相談がしやすくなり、顧客満足も高まると言われています。また、スーパーなどでは、挨拶がよくなると苦情が減り、万引きも少なくなるという効果もあるそうです。会員カードのキャンペーンをやって固定客を増やしてもうまくいかなったお店が、挨拶を徹底したことで、ファンが増え、固定客も売上も増えていったという話を聞いたことがあります。

 しかし、これほどみんなが「挨拶の大切さ」をわかっているのに、「挨拶をしましょう」と号令をかけたり、挨拶強化月間などで徹底しなければならないのは、「挨拶が徹底できない」という問題があるからだと思います。挨拶を訓練し、管理し、注意をすれば、その時は良くなっても、数か月後にはもとに戻ってしまうという話をよく聞きますが、それほど「挨拶」を徹底するのは、奥が深く難しいことなのだろうと思います。
 特に、挨拶は形以上に「気持ち」が重要。どれだけ「いらっしゃいませ」と声を出していても、心がこもっていなければ、逆に「感じが悪い」という評価になってしまいます。本来、挨拶は気持ちを伝えることですから、心から「ようこそお越しくださいました」という気持ちがあれば、アイコンタクトや笑顔だけでも通じるもの。「心のこもった挨拶を全員が行う」ということは、命令や管理でうまくいかないのだろうと思います。

 以前、ある有名なスーパーが取り組まれた挨拶強化の話を聞きました。その経営者は、どうすれば挨拶が徹底できるかと考え、結論として、やはり働く人が「お客様に喜んでいただきたい」という気持ちをもって働くことが、命令で挨拶をさせることより大事なことであると考え、様々な取り組みを実行されました。
 「お客様に喜んでもらいたい」という気持ちをつくるには、まず、働く人がいかに自分の仕事に誇りや満足感を持ってもらえるかが大事である。まず取り組まれたのが、商品知識の教育でした。売り場でお客様から商品の質問をされても、答えられないと顔が下に向いてしまい、挨拶もできなくなる。売る商品に自信をもってもらうことが大事だと、商品知識の教育をされました。接客においても「売ろう」とすると感じが悪い接客になる。「商品を売ろうとする接客をするな」という指示を出されたそうです。また、働く人が気持ちよく、楽しく働ける環境がなければ、お客様に喜んでもらおうという気持ちも生まれない。そこで、上司が職場に出向いて不満を聞き、現場との話し合いも続けられました。お客様に喜んでもらうことが商売であるという思いを伝え、トップが店舗で話し合いを重ねる中で、次第に社員の中にトップの「お客様に喜んでもらう店にしたい」という思いが通じるようになったそうです。そこから全員が気持ちのよい挨拶をするお店に変わっていったというお話でした。たかが「挨拶」といえば挨拶ですが、本当は奥が深く、徹底するためには本気で取り組まないといけないことなのだと思います。

カテゴリー : メルマガコラム 思うこと

2023 年 01 月 24 日 10:47

仕事の使命感

 自分は何のために働いているか。自分の仕事の使命をどうとらえるかで、日々の仕事は大きく変わってくると思います。例えば、店の掃除をするという仕事でも、決められたところを、ただ掃除するのが自分の仕事だと思ってする掃除もあれば、「私の仕事は、来られるお客様に良い思い出を作っていただくこと。だから少しでも綺麗にしよう」と思ってする掃除もあります。自分は、何のために働いているかという使命感ひとつで、日々の仕事の景色は大きく変わっていくはずです。

 先日、こんな話を、あるホテルのスタッフの方から伺いました。
 宴会部で働くその女性は、仕事にやりがいを感じることがなく、ただ受注した宴会を予定通りにこなすことが仕事だと思い、日々働いておられました。あるとき、その会社で宴会部の使命をもう一度見直そうということになり、幹部の人たちで宴会の本当の使命を話し合ったそうです。宴会部の目的はただ料理を出すことなのだろうか?そもそも何のためにお客様は宴会をするのだろうか?時間をかけて話し合った結果、どのお客様も宴会が目的ではなく、人と人との絆を深めたいから、人が集まり食事をするのだと、この仕事の原点に気づかれたそうです。宴会部の仕事は、ただ料理を出すことではない、本当の使命は「お客様一人ひとりの絆づくりのお手伝いをすること」だと、改めて自分の仕事の意味、意義を感じたそうです。そこに参加していたその女性は、その時から自分自身の仕事への向き合い方が変わりました。ただ予定通りに仕事を終わらすことだけ考えていた「つまらなかった仕事」が、どうすればお客様に喜んでいただけるかと考えながらする仕事になり、今まで以上に仕事が楽しく、やりがいを感じるようになったということでした。

 この女性が働くホテルは、大阪、道頓堀にある株式会社王宮という会社のホテルです。今でこそ、リピーターのお客様が多いお客様満足度の高いホテルですが、以前はそのようなホテルではなく、会社も暗い雰囲気だったそうです。そこから経営者が理念や使命を明確にし、社員の人たちと共に理念を作りあげ、変革されていくのですが、これは、その改革の途中であったお話です。

 販売をしなれば、業績を上げなければと、目の前のことばかりを考えて仕事をしていると、自分の仕事の使命とは何かということを考える余裕なくなってしまうのかもしれません。ただ、頑張るだけでは疲れてしまいます。宴会部の彼女は、以前と仕事は同じでも、心は疲れない。楽しく働けるようになったと話されていました。やはり、自分は人に役立つ素晴らしい仕事をしていると感じて働けている時は、疲れも感じないのでしょう。仕事の使命感。仕事をする上で最も大事なものだと思います。

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2023 年 01 月 17 日 17:41

働く人の幸せとやりがい

 先週の土曜日、ホワイト企業大賞の表彰式が東京で行われました。
 このホワイト企業大賞は、世の中に「いい会社」を広げていこうと、様々な人が集まって運営されている活動です。私も委員の一人として参加しています。今年も多くの企業がエントリーされ、21社の会社が様々な賞を受賞されました。

 ところで、「いい会社」とはどのような会社でしょうか。人によって「いい」という基準は様々だと思います。
 ホワイト企業大賞では「いい会社」とは、「社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にする会社」と定義しています。業績や利益を追い求めるのではなく、働く人たちが幸せや働きがいを大切にし、社会に役立つ会社であろうと努力を続ける会社を「いい会社」であると、ひとつの方向性を示しています。
 これは「方向性」であって基準ではありません。経営において「社員の幸せや働きがい」を大切にしている会社が、この賞をひとつの指針としながら、切磋琢磨して進んでいく学びの場でもあります。

 しかし、社員の幸せや働きがいとはどんなことでしょうか。
 給料が良い、休みが多い、福利厚生が充実しているという目に見えることもありますが、働きがいとはそれだけではなさそうです。アンケートを取ると、社員の人たちが充実して働いていることが見えてきます。
 この会社で働いていると自分が成長できる、自分が決めて仕事ができる(任されている)、他者に役立っているという実感がある、自分の個性が活かされていると感じる・・・。働く時間が充実した時間であるからこそ、前向きに働け、社員が協力しながら、もっと良い仕事をしようと助け合いながら頑張っている姿が見えてきます。だからこそ、こうした企業は総じて業績も伸び続けています。

 企業は業績をあげ、利益を出してことが求められます。だから、業績を大切にする会社は多い。しかし、大切にするものの順番が違うとその経営も変わっていきます。応募されている会社が、いちばん大事にされているのは「社員の幸せや働きがい」。それを追求していくことが業績や利益につながっていくという信念で経営をされている会社です。いちばん大事にするものの順番が「社員」なのです。

 昭和の時代から、他社と戦い、業績を追求する時代が続いてきた日本の中で、ホワイト企業大賞が示すこの方向性の経営は、まだ異端に見えるし、甘い考え方に見えるのかもしれません。
 ただ「どうせ働くなら楽しく働きたい、やりがいを感じながら働きたい」というのは、考えてみれば誰もが求めている普通の思いだと思います。いい会社づくりとは、ただその当たり前を大切にしていくことであり、人間にとって自然なことなのだと思います。

ホワイト企業大賞
http://whitecompany.jp/

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2023 年 01 月 12 日 10:23

あくなき向上心

 一次的に繁盛していても、すぐに飽きられてしまうお店もあれば、何年も繁盛し続けるお店があります。いくら優れた商売でも、時代が変化する中で、同じことをしていてはお客様に飽きられてしまいますし、他店が進化すると差がなくなってしまいます。サービス業に限らず、どの企業でも永続的に繁盛し続けるということは大変なことです。現状に満足せず、常に進化していこうという姿勢がなければ、何十年も支持され続けることはできないと思います。
 36年もの間、顧客満足日本一に輝く旅館「加賀屋」さんは、全国にファンがいる老舗の会社ですが、昔から、そんな評判に満足せず、常により良いおもてなしを追求してこられた会社です。毎月の会議で真っ先に話されるのは業績ではなく、客室で集められた「お客様の声」を社長を筆頭に全員で確認するところから始まります。そして少しでもご不満があれば、すぐに改善をする。お客様に喜んでいただける旅館づくりのために、常に地道な取り組みを続けてこられてきた旅館です。
 そんな加賀屋さんも、ある時、CSの評価が全国3位に落ちてしまい、36年間守り続けてきた日本一の座を明け渡す事態があったそうです。代表の小田さんは、この時、「もしかすると私たちの中に“自分達は日本一であり、このままで良いのだ”という慢心があったからかもしれない。」と、創業から大事にしてきた加賀屋のDNAの形骸化に危機を感じ、おもてなしを見直していこうと、顧客の声からの改善のサイクルを短くしたり、暗黙知だったおもてなしのDNAを明文化して全員で共有するなど、様々な取り組みをされたそうです。その結果、一年後には日本一に返り咲くことができたそうです。
 誤解のないように申し上げますが、加賀屋の社員の人たちは、日本一の旅館であることに誇りを持ち、それに恥じないおもてなしを追求されている方ばかりです。それでも、どこかに慢心が出てきてしまう。誰でもそうだと思いますが、うまくいっている時は、どうしてもこのままで良いと安心してしまいます。そうした中で、加賀屋さんが日本一であり続けてこられたのは、どのような時も「お客様の喜び」を第一に考え続け、常に今のままではいけないという危機感を持ち続けてこられたからだと思います。
 ある方が、「進化・向上する会社しか人財は育たない」と話されていましたが、確かに同じことを繰り返している会社で人は育たちません。やりがいもなくなってしまうのでしょう。加賀屋さんが、いつも会社全体でより良くしよう、もっとよくしようと取り組まれていくことは、お客様の満足だけでなく、働く人たちの誇りややりがいにつながっています。現状に満足することなく、常に創意工夫する。そのあくなき向上心こそ繁盛し続けていくために最も大事な価値観ではないでしょうか。

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2023 年 01 月 06 日 11:36

地域から尊敬される会社

それぞれの街にはその地域を代表する企業があります。
 その中でも「〇〇さん」と地元の人が「さん付け」で呼ぶ、地域の人から親しまれ、尊敬されるような会社が存在します。北海道の六花亭さんや博多のふくやさんなどは、地元の人から長く親しまれている会社です。
 そうした会社は、もちろん素晴らしい商品を販売されていることや、買い物をする時の良い接客も評判を生み出しているのだと思います。それ以外にも、地元の行事に参加したり、地域の発展のために、地域貢献活動にも惜しみなく投資する姿勢なども、地元から尊敬されているのでしょう。
 しかし、いくら表面上で地域貢献活動をしたとしても、会社の実態をいちばん良く知っているのはそこで働く社員の人たち。働いている人が家族や友人から「会社はどう?」と言われた時に、「いい会社だ」と言うか、「あんな会社は・・」と言うか。社員の人たちが働きがいを感じていなければ、良い評判は生まれません。地域の評判はそこで働く社員の人たちの存在も影響しているのではないでしょうか。

 長野県の伊那食品工業さんも、地元の人たちが「伊那食品さん」と親しみを込めて呼び、地域から尊敬される会社のひとつです。会社という存在そのものが地域の人に迷惑をかけているからと、会社の敷地につくったガーデンを地域の人に無料で開放されているのは有名ですが、社員の人たちは、出勤時に車を右折して会社に入ると前の道路が渋滞になってしまうからと、少し遠回りになったとしても、みんなが左折で入るようにしておられるそうです。休みの日に買い物に行くときも、スーパーの店に近い駐車場は身体の不自由な人が利用する場所だからと、多くの社員があえて遠い場所に車を止めると言います。自分の会社の理念に共感し、誇りを感じているからこそ、会社から言われた訳でなくてもこんな行動をされるのでしょう。

 昔から、売り手よし、買い手よし、世間よしと、商売は「三方よし」が大事であると言われていますが、これからの時代に長く存続していくためには、やはり地域から応援され、尊敬されるくらいの会社にならなければいけないのかもしれません。その為には、まず自分たちの会社が働く社員の人たちを大切にし、社員の人から尊敬される会社であること。近江商人の言葉に「売り手よし」が先にあるのはそういう教えなのかもしれません。

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私たちが大切にしていること