TOP > 代表 西川の気まぐれ日記

2024 年 05 月 27 日 16:25

ファンを生み続ける理念

 東京ディズニーランドが出来て今年で、41年目になるそうですが、創業当時からファンを増やし続け、素晴らしい事業を展開されています。各地に様々なアミューズメント施設が生まれる中で、なぜ、ディズニーランドが成長し続けられたのか。先日、ディズニーランドで長く働く方から、現場から見たファン創造の理由を、直接伺う機会がありました。
 ファンを魅了し続ける理由は、常に新しいアトラクションやショーを提供し続けることだと言われることもありますが、その方は、それもあるが、やはり、パークで働くキャストたちのおもてなしの気持ちが、「また行きたい」という気持ちにつながっている、と言われていました。
 確かに、乗り物を提供しているだけでは、あのような世界は作り出せないでしょう。ディズニーは当初から、スタッフは従業員ではなく、映画の中にいるキャストであって、映画の世界に来るゲストに幸せになってもらうことが使命であるという教育を徹底されています。
 清掃スタッフには、「あなたの仕事は掃除」ではなく、「ハピネスを創造する」のが仕事だと教える。ただ清掃するなら効率よくやればいい。しかし、あえてゲストと会話をしたり、楽しませることをやろうとするのがディズニーのスタッフ。マニュアル通りではなく、その人に合わせて自分の行動を考える。すべてのスタッフが、いかに喜んでもらえるか、いかに楽しんでもらえるかを考え続けているからこそ、あの雰囲気が生まれています。ウォルト・ディズニーさんが創業時に描いた「青空をバックにした大きなステージで3次元の映画を全員で作り出していく」という思想が未だに根付いているようです。
 ディズニーは、キャストに、自分で考え、主体的に行動しようと伝えていますが、ただ、何もかも自由でよいということではないようです。その行動が常に理念「ハピネスの創造」につながっていることが求めらるそうです。
 例えば、ショーのダンスのスタッフは、練習を重ねたプロ。その気になれば、難易度の高いダンスができる人ばかりだそうです。しかし、決してそういうダンスはしない。ディズニーがめざしているのは、家族が楽しめるファミリーエンターテインメント。だから、ダンスは、ゲストが一緒に踊れるような平易なダンスであるべきだと話し合い、あえて簡単なダンスにしているのだとか。平易なダンスにはショーで事故がないようにという意味もあるそうですが、とにかく「ハピネスの創造」への想いが全員に浸透しているようです。
 理念という枠の中で自由に考え、自由に行動する。そのハピネスの創造の行為が、お客様を幸せにし、それを見た自分のハピネスに戻ってくる。理念を実感するために、トレーナーは、キャストにゲストの顔をよく観察してみるようにというように伝えているそうです。
 
 40年変わらずファンが生まれる背景にある理念に対する強いこだわり。それが顧客に伝わり、「また行きたい」という気持ちをつくる。理念へのぶれない思いが、永続的な成長の原動力であることは、どの企業も同じかもしれません。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営 素晴らしい組織風土づくり

2024 年 01 月 16 日 09:55

地域で長く続く会社の共通点

 栄枯盛衰と言いますが、これだけ世の中が変化していると、一時的に流行っていたお店がしばらくするとなくなっていたり、昔住んでいた町に久しぶりに行くと、古い店がなくなり、全国チェーン店ばかりが目立つ町になっていたり、栄枯盛衰を実感することがあります。

 ただ、そんな変化が激しい世の中でも、地域の中には、創業何十年と、長く続いている企業があります。同じ変化の風を受けながらも地域の中で長く続く。こうした企業は何が違っているのでしょうか。
 そもそも、長く続くには、顧客や地域からの信頼がなければ続く訳がありません。時代に左右されるようなものではなく、クオリティの高い、「本物」の商品やサービスを提供し続けられるかどうか。先日、埼玉県にある創業70年続く会社を訪問させていただいたのですが、やはり商品へのこだわりは並外れたものでした。「現状に胡坐をかくな」、「常により良いものを生み出そう」。そんな姿勢があるからこそ、高品質が維持され顧客から支持される。社会に良いものを提供していくことが自分達の使命であるという強い思いがありました。
 ただ、そうした高い品質を生み出すのは、経営者だけで難しい。そこに共感する社員がいてこそ実現します。社員のことを考え、経営者が「適当でよい」「現状でよい」というような甘い基準でいれば、働く人も楽なのかもしれませんが、それでは顧客からの信頼は生まれません。しかし、そうかといって、ただ厳しいだけの会社では人は定着しない。厳しさの中で「人へ優しさ」がなければ長く続いていかないのではないでしょうか。
長く続く会社のもうひとつの共通点は、社員を人として大切にする「大家族主義」の想いです。別の地域ですが、先ほどの企業と同じく、創業から70年以上続く会社を訪問させていだきました。この会社にも社員を家族のように大切にする風土がありました。単なる労働力として扱うのではなく、「社員は大事な家族である」「大切な仲間である」。経営者が社員を人として大切にする姿勢があるからこそ、社員も頑張って働ける。両社には共通の風土がありました。
 もちろん、そうした会社でも、家庭の事情でやめていく人もいます。だた、辞めていった人が「あの会社は人を大切にしない」と噂をするようでは、その企業から人が離れていくはず。辞めた人も働いている人も自分の家族に「あの会社はいい会社だ」と口にされているからこそ、狭い地域の中でも採用に困らず、人が集まってくるのだろうと思います。

 地域の中で企業が長く続くには、やはり商品へのこだわりと働く人を大切にする経営者の想いがどうしても必要なのかもしれません。この10年くらいでCSやESという言葉が流行っていますが、老舗企業は昔からわかっておられる当たり前のことなのかもしれません。いいものを作ろう。社員を大切にしよう。経営者にその姿勢があるからこそ、働く人の誇りが生まれ、地域の人も共感する。「この会社は地域の誇りだ」と思われるようになるのは、並大抵の努力ではないと思いますが、栄枯盛衰の世の中で長く続いていくには、やはり、このぶれない理念が不可欠なのかもしれません。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営

2023 年 12 月 28 日 15:50

未来から考える

 過去の実績から「今、何をやるべきか」ではなく、未来にどうなりたいかと目標を定め、そこから「今、何をやるべきか」と考える思考法を、バックキャストというそうです。
 SDGsなどもそうした思考法。持続可能な社会を実現するために何をするか。過去の延長線上の未来ではなく、未来を定めてそこに線をつくるという考え方は、新しいものではないのかもしれませんが、過去の経験が生かしにくい、変化の大きな時代には、このバックキャストの思考法がより大切になってきているように感じます。
 ただ、そうはいっても、つい過去の成功体験が頭によぎってしまい、過去のやり方を手放せないことも多い。これまで、これで上手くいったのだから、これで良いはずだ、過去のやり方を伸ばしていこうという発想になりがちです。特に私のように年齢を重ねれば重ねるほど、過去のやり方に囚われてしまいます。ただ、どんどん過去の知識や成功体験が通用しなくなる時に、それは足かせになってしまうこともある。
 誰もが理想の未来を描き、そこに向かって今を考えるという思考の大切さはわかっていても、その実現が難しいのは、つい安定を望んでしまう思考の癖が原因なのかもしれません。

 ただ、「世の中をより良くしたい」というモチベーションから、新しい企業を立ち上げ、これまでにないビジネスを展開する企業が増えているように、若い人にとっては、未来から今を考えることはもはや普通になのかもしれません。
 しかし、過去の企業を見ても、戦後の混乱期に「世の中に役立とう」と高い理想を掲げ発展してきた会社もあるので、バックキャストは、決して新しい思考法ではないと思います。理念経営は昔から未来志向です。

 未来をどう描くのか。どんな未来をつくり出したいのか。
 経営者にとっても大切な思考ですが、働く人にとっても、「過去の実績を何%上げよう」と言われるより、未来志向の考え方の方がワクワクしてきます。
 より良い未来をつくり出していきたいですね。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営

2023 年 12 月 06 日 10:15

お客様の立場に立つ

 昔から営業や接客などで「お客様満足」を高めていくには、お客様の立場になる、お客様の目線になって考えることが大切だと言われています。ただ「お客様の立場に立つ」というのは意外と難しいもの。
 そもそも、自分と相手は違う人間。相手のことはわからないのが普通です。しかも、売る側になると、つい売ろうという意識が強くなり、買う側の気持ちになかなか寄り添えません。
 ましてや知識も経験があるプロ。お客様は素人。素人であるお客様が高い買い物をする時の不安や、そこにお金を出そうとする時にどんな気持ちになるのか。経験があるほど、お客様の気持ちがわかりにくくなってしまうのかもしれません。
 「相手の立場に立つ」というのは、相手のことがいかに自分事として考えられるかということです。難しいとはいえ、高い買い物をする時ほど、自分のことのように考えてくれる人に対応してもらえると信頼は高まります。

 先日、あるリフォーム会社で常に優秀な成果を出す一人の女性営業スタッフの方のお話を聞く機会がありました。成績は全国トップクラス。他の人の何倍も売る人だと聞いていたので、さぞ提案力や知識がある人かと思っていたのですが、その人が信頼されているのは、テクニックや知識ではなく、「お客様が、もし自分の家族なら」と考える、営業の姿勢でした。
 お客様を逃がしたくない、何とか売り込みたいと思ってしまうと、つい、これが良い、こんな住まいが良いと売り込みや提案をしてしまいそうですが、その人は、お客様を自分の家族と思い、その方がどんな暮らしをしたいか、何を望まれているのか、リフォームに対するお気持ちを最初に徹底的に伺って寄り添っていくそうです。

 売り手である前に、お客様を自分の家族や親戚のように思う。そうすると、だんだんと自分事のようになり、お客様が「こうしたい」と希望されたことに対しても「それよりはこうした方がよい」と一緒に考えたり、時には「今は、このまま使う方がいい。リフォームしない方がいい」と言ってしまうこともあるそうです。そんな姿勢で、工事が終わるまで家族の一員のように付き添うのが彼女のスタイル。断ってしまうと、売れなくなるのではと思いましたが、彼女の親身な姿勢にお客様は心から感動し、次々と契約が生まれているのだそうです。

 自分の家族がお客様ならと想像すると、確かに無理な販売はしない。家族だと思えば、時には「それはやめた方がいい」ということもあるもしれません。「お客様が自分の家族だったら」という視点はシンプルですが、お客様を自分事としてとらえる上で、いちばん良い方法なのかもしれません。BtoBならば、自分がもし、その会社の社員なら、経営者なら、製造する人なら、「もし、自分の家族が使うとしたら」と考えることでしょうか。
 そう考えることで、本当の意味でお客様目線で聞くことができ、真のお客様志向が生まれてくるのかもしれません。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営 素晴らしい会社

2023 年 10 月 17 日 18:11

組織の壁の壊し方

 組織の壁、部門の壁というのは、昔からよく聞く話ですが、壁というのはなぜ出来てしまうのでしょうか。

 先日、顧客満足が高いホテル、大阪の「道頓堀ホテル」の経営改革の話を伺う機会がありました。
道頓堀ホテルは、今でこそ稼働率9割を超える顧客から人気の高いホテルですが、20年ほど前は、組織の中に厚い壁がいくつもある古い体質の会社で、経営は赤字になっていたそうです。当時から働く料理長に伺うと、その当時は、他の部門の人と口をきくこともなく、それぞれが自部門のことだけを考える風土だったそうです。調理部門は「美味しい料理」を作るプロであり、それを提供するのが仕事。営業部門やサービス部門から、何か依頼されたとしても、「こっちには関係がない」「料理にケチをつけるな」とまったく相手にしない。「他部門は敵だ」というくらいに感じていて、大きな壁がいくつもあったそうです。

 そうした状況の中で、三代目の経営者によって道頓堀ホテルの経営改革が始まったのですが、料理長にとって壁を超える転機になったのは、それぞれの部門長と参加した外部の勉強会だったそうです。最初は嫌々参加していた勉強会でしたが、回を重ね、飲み食いをしているうちに少しずつお互いを知るようになり、他の部門がどれだけ大変なのか、どんな思いで働いているかがわかるようになりました。そんな中で、少しずつ他部門への気持ちが変わっていったそうです。無理やりでも参加した「共通体験」の場がわかり合う機会になった、と言われていました。
 その勉強会では、自分の仕事の目的を考える機会があったそうです。何のために仕事をしているのか。その問いに向かっていく中で、調理部門は、本当は料理を作ることが目的ではない、料理を通してお客様に喜んでもらうことが目的だと気づかれます。美味しいものを作るのが本来の料理人であるという昔堅気の世界で育った料理長にとって、大きな価値観の転換。しかし、「目的」がわかると、料理を運んでくれる人、宴会を受注してくれる人など他部門への見方も変わり、会社の理念が改めて腹に落ちたと言われていました。
 それぞれの部門で、各部門の目的の先にある「大きな目的」が腹に落ち、「部門は違っても私たちは同じ目的に向かっている仲間だ」と感じられるようになると、自然と協力や助け合いが生まれ、当然、お客様からの評価も高くなり、顧客満足もどんどん上がっていったそうです。

 会社に限らず、家族でも、スポーツでも、人と人との行き違いは「わかりあえていない」ことから生まれるもの。「わかりあえていない」状態をほっておくと「壁」が生まれ、余計にわかり合えなくなり、敵対心まで生まれてしまいます。最初はストレスがあったとしても、やはり、時間をかけても、じっくりと話し合うことがいちばん大事なのでしょうか。
 しかし、そもそも、何のために部門があるのかと考えれば、全体で良いものを生み、お客様に満足していただくために生まれたもの。その共通の目標、目的を忘れるから、壁が生まれる。とすれば、壁があるのは、数字ばかりに目が向いて、理念が形骸化したり、蔑ろにされているのかもしれません。

カテゴリー : DOIT! 「いい会社」が実践する理念経営 素晴らしい会社

2023 年 09 月 26 日 15:06

問題解決と問題対処

 仕事の中でも、日常生活の中でも、次から次への問題が起こります。この「問題」をどう解決していくか。そのアプローチで結果が変わっていきます。
 社員が自律的にいきいきと働く自動車ディーラー、ネッツトヨタ南国の創業者、横田英毅さんは、「問題対処」ではなく「問題解決」が大事だと言われています。

 横田さんから伺った話がいちばんわかりやすいので、引用させていただくと、例えば、一人の空腹の人がいたとする。問題は空腹で困っていること。この人に魚を一匹与えれば一日は食べることができます。しかし、それは問題対処。一日空腹が満たされても、次の日また問題が起こる。しかし、その人に魚の取り方を教えれば、その人は一生食べていけることができる。これが問題解決。問題に対して、直接的な、見えている部分にアプローチするのが問題対処。見えにくい部分にアプローチしていくのが問題解決だということです。

 例えば、「売上が未達になりそうだ」という問題が起こった時に、訪問件数を上げるように指示するようなことは問題対処。そもそもなぜ未達という状況になってしまうのか、その根本原因に目を向ける。確かに今月のためには、すぐに問題対処をしないといけませんが、解決しなければまた問題が起こってしまいます。
 しかし、この問題解決というのは、見えない原因を探ることなので、なかなかすぐに解決策が見つけられない。もし、見つかったとしても時間がかかることなのでなかなか手をつけないという問題もあります。例えば、空腹の人に魚を与える例でいえば、確かに魚を一匹与えることはその場限りだとわかっている。しかし、その人に魚の取り方を教えることは、時間も手間もかかるので躊躇してしまう。仕事の中でも、対処、対処で済ませてしまおうとすることはたくさんあるのかもしれません。しかし、そうやってその場をしのいでもまた問題が起きてしまう。火事になったら消火するという問題対処も必要です。でも、火事になる要因を見つけて火事が起こらないようにしなければ同じことが起きる。やはり、時間がかかっても、問題解決をしないと物事は進化していきません。

 働く人が幸せになる会社をつくろうとされた横田さんは、働く人のやりがいがいちばんの要因だと考えられ、トップが指示命令をしない、社員の人たちがお客様のために自分で考え行動する組織をつくってこられました。問題を発見する。そして、時間がかかっても、問題解決にトライする。仕事でも、経営でも、日常生活でも、このスタンスがいちばん大事なのかもしれません。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営

2023 年 08 月 08 日 17:41

どんな時も理念が優先

 日曜日、スターバックスさんのお店に入ると、広い店内はお客様でいっぱい。座れないお客様が待っておられました。席には、本を読む人、教科書を広げて勉強をする人、パソコンを出して仕事をする人。それぞれが自分の休日を楽しんでおられます。この店なら、ゆっくりと過ごせるという雰囲気があるからだと思いますが、経営する側は、長居されるお客様について、本当はどう思っておられるのか。

 スターバックスさんの本を読ませていただくと、やはり、同社へのいちばんのクレームは「座れない」ということだそうです。しかし、だからといって、時間制限したり、お客様を急き立てるようなことは絶対にしないのが同社のポリシー。「人々の心を豊かで活力のあるものにするために」というミッションを業績より大事にして、経営をしてこられた会社です。アルバイトさんも、社員の人も、みんながこのミッションに共感して働いておられるので、その空気がお店全体からから伝わってきます。店舗もゆっくりできる空間ですが、スタッフの想いがお店の雰囲気をつくり、このお店でしか味わえない体験を求めるファンが生まれているのだと思います。

 しかし、経営である以上、業績が悪くなると企業は存続できません。スターバックスも昔、大きな危機があり、大量のお店を閉店してしまったことがあるそうです。それでも、この理念優先の経営方針を絶対に変えることはなかったそうです。もう一度原点に戻り、1万人のリーダーが集まる会議で存在意義確認したそうです。そこから業績が再び上昇。危機を乗り越えたのも理念でした。
 日本のスターバックスさんも、このミッションを大事にされています。「何のために私たちが存在するのか」。何度も何度も、事業の目的・ミッションを伝え、考えてもらう。スタッフの初期教育に70時間もかけられると伺っています。

 会社が本来の目的を忘れてしまうと、利益が目的になってしまう。そうなれば、現場は利益をあげるための行動を優先する。その行動が長年のファンを裏切ることになり、お客様が離れる。だからこそ、どんな時も理念を優先する。スターバックスさんの強さは、理念への強いこだわりだと思います。

 ひと昔前、日本でも「理念みたいな、きれいごとで飯が食えるか」と、経営理念より業績が大事という論調もありました。しかし、理念を忘れた経営が問題になっています。今は、「理念がないと飯が食えない」という時代がきているのかもしれません。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営 素晴らしい会社

2023 年 08 月 01 日 09:58

おもてなしは、自由に。

 お客様へのおもてなしは一律であるべきか。
 先日、ある勉強会の中でこんな議論をしていました。
 例えば、お客様への誕生日のお祝い。あるお客様にはしてあげた。しかし、他のお客様にはしない。これでは不公平になるのではないか。社内でこうした議論があって、結局、その会社では、やらないことにしたそうです。確かに、差がついてクレームが起こるかもしれないと思えば、怖くなります。

 しかし、そうしたことを一切気にせずに、お客様満足に取り組んでいる会社もあります。
 北九州の美容室バグジー。おもてなしで有名な美容室です。
 バグジーのスタッフは、お客様が誕生日だと聞けば、誕生日のお祝いをしたり、雨が降ってきたら、お客様の自転車が濡れないようにサドルにビニールをかぶせてあげたり、気が付いたスタッフが、主体的にお客様のために動いていくお店です。

 バグジーには、おもてなしのルールやマニュアルは一切ありません。誕生日のお祝いも、やっても良いし、やらなくても良い。おもてなしは、スタッフに任せられています。確かにバラつきがあると言えばあるのですが、こうしたやり方を長年続けているバグジーには、不公平だというようなクレームは一度も来たことはないそうです。

 もちろんバグジーにも「購入者への特典や割引」など、店として実施するサービスはあり、一律にされることは他と同じようにされています。
 しかし、「サービス」と「おもてなし」は別物。おもてなしは、気配りや心配りと言われるように、本来、一律では行うことはできません。足が悪い方がこられたら、席を用意して休んでいただく。雨に濡れた方が来られたら乾いたタオルをお持ちする。その人が、相手の状況を見て、気持ちが動いたら行動する。何かしてあげたいという気持ちが行動をつながっていくもの。双方の心の交流がおもてなしです。だから、おもてなしは、その場限りのもの。もし、されていない人がいたとしても、その人は決して損をしたという気持ちにはなりません。

 バグジーの久保社長は、「一律に提供しなければと思って躊躇してしまうより、まず、やってみた方がいい」と言われます。もちろん、範囲や枠はある程度指示をしたとしても、「あとは、好きにやっていい」と、スタッフに自由にやってもらう。きっと、この方が「おもてなし」はうまくいくのでしょう。「決められたこと」をやれといわれるより、自由にやっていいという方が、スタッフにとってもやりがいがあるはず。
 おもてなしは、形より、お客様を喜ばせたいという真心が一番大事なのではないでしょうか。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営 素晴らしい会社

2023 年 05 月 09 日 10:12

仕事への誇り

 全国のレクサス店の中でも、トップクラスの販売台数を誇る、レクサス星が丘。すべての部門のスタッフが協力しながら、お客様満足を高め続けているお店です。
 映像で取材する前に、そのお店の警備員として働く、早川正延さんという方にお話を伺いました。早川さんのお仕事は警備。お店に入るお客様の車を誘導したり、出て行かれる車が安全に出庫できるよう誘導をされています。待ち時間はお店の前に立ち、お客様のご来店を待っておられます。

 早川さんは、ある時、「ただ、ここで待っていてもつまらない。もっと何かできないか。」そんなことをぼんやり考えるようになったそうです。そんなある日のこと、目の前の通りを通り過ぎていくレクサス車にお辞儀をしました。
 それから、早川さんは、通り過ぎていくすべてのレクサス車にお辞儀をすることに。このお店で買われたお客様だけでなく、他店で買われたお客様のレクサス車にも、1日1000台近い車に、深々とお辞儀をする。それを何年も続けておられます。
 走っている車への挨拶ですから、気が付かれる方もいれば、気付かれない方もいる。それでも早川さんはそのお辞儀をするそうです。そんな早川さんの姿勢に感動されるお客様が増え、早川さんに会いたいと来店される方もおられるそうです。

 なぜ、こんなお辞儀をするようになったのかと伺うと、「大したことはしていません」と謙遜しながらも、自分がここで働かさせてもらっていることへの感謝の想いやお客様への感謝の気持ちが自然とお辞儀になったと話してくれました。

 早川さんは、店頭でのお辞儀の他にも、駐車場での車の誘導の場面でも、どうすればもっと「お客様が安心して駐車していただける誘導ができるか」と考えながら、誘導時の立ち位置、オーライという言葉の大きさ、わかりやすいしぐさについても研究を続けておられました。お客様のバックミラーに自分がどう映っていれば、安心されるのか。そんな細かなことまで研究されています。「素晴らしいですね」と言うと「まだまだ完璧な誘導はできません」と笑顔で話されていました。

 「お客様のためにもっと何かできないか」。お辞儀をする、誘導をするという行動は誰でもできることかもしれません。ただ、早川さんのお辞儀や誘導は、確実にお客様に伝わり、感動を生み出しています。それはきっと早川さんが自分の仕事に誇りをもち、もっとよくしようと思っているからこそ、その姿勢や心が伝わっているのだと思います。
 仕事だからと嫌々やる仕事、より良くしようと誇りを持って行う仕事。どちらも同じ仕事ではあるかもしれません。どうせやるなら、後者のような仕事をしていきたいですね。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営 素晴らしい会社

2023 年 01 月 31 日 17:05

心のこもった挨拶

 小売業やサービス業では、昔からお客様に挨拶をすることが大切だと言われています。
 「おはようございます。」「いらっしゃいませ」「ありがとうございます。」とスタッフが元気に挨拶をしているお店は、活気を感じますし、顧客として気持ちがいい。挨拶を良くする店では、顧客が声をかけやすくなるので、ちょっとしたことでも相談がしやすくなり、顧客満足も高まると言われています。また、スーパーなどでは、挨拶がよくなると苦情が減り、万引きも少なくなるという効果もあるそうです。会員カードのキャンペーンをやって固定客を増やしてもうまくいかなったお店が、挨拶を徹底したことで、ファンが増え、固定客も売上も増えていったという話を聞いたことがあります。

 しかし、これほどみんなが「挨拶の大切さ」をわかっているのに、「挨拶をしましょう」と号令をかけたり、挨拶強化月間などで徹底しなければならないのは、「挨拶が徹底できない」という問題があるからだと思います。挨拶を訓練し、管理し、注意をすれば、その時は良くなっても、数か月後にはもとに戻ってしまうという話をよく聞きますが、それほど「挨拶」を徹底するのは、奥が深く難しいことなのだろうと思います。
 特に、挨拶は形以上に「気持ち」が重要。どれだけ「いらっしゃいませ」と声を出していても、心がこもっていなければ、逆に「感じが悪い」という評価になってしまいます。本来、挨拶は気持ちを伝えることですから、心から「ようこそお越しくださいました」という気持ちがあれば、アイコンタクトや笑顔だけでも通じるもの。「心のこもった挨拶を全員が行う」ということは、命令や管理でうまくいかないのだろうと思います。

 以前、ある有名なスーパーが取り組まれた挨拶強化の話を聞きました。その経営者は、どうすれば挨拶が徹底できるかと考え、結論として、やはり働く人が「お客様に喜んでいただきたい」という気持ちをもって働くことが、命令で挨拶をさせることより大事なことであると考え、様々な取り組みを実行されました。
 「お客様に喜んでもらいたい」という気持ちをつくるには、まず、働く人がいかに自分の仕事に誇りや満足感を持ってもらえるかが大事である。まず取り組まれたのが、商品知識の教育でした。売り場でお客様から商品の質問をされても、答えられないと顔が下に向いてしまい、挨拶もできなくなる。売る商品に自信をもってもらうことが大事だと、商品知識の教育をされました。接客においても「売ろう」とすると感じが悪い接客になる。「商品を売ろうとする接客をするな」という指示を出されたそうです。また、働く人が気持ちよく、楽しく働ける環境がなければ、お客様に喜んでもらおうという気持ちも生まれない。そこで、上司が職場に出向いて不満を聞き、現場との話し合いも続けられました。お客様に喜んでもらうことが商売であるという思いを伝え、トップが店舗で話し合いを重ねる中で、次第に社員の中にトップの「お客様に喜んでもらう店にしたい」という思いが通じるようになったそうです。そこから全員が気持ちのよい挨拶をするお店に変わっていったというお話でした。たかが「挨拶」といえば挨拶ですが、本当は奥が深く、徹底するためには本気で取り組まないといけないことなのだと思います。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営

2023 年 01 月 17 日 17:41

働く人の幸せとやりがい

 先週の土曜日、ホワイト企業大賞の表彰式が東京で行われました。
 このホワイト企業大賞は、世の中に「いい会社」を広げていこうと、様々な人が集まって運営されている活動です。私も委員の一人として参加しています。今年も多くの企業がエントリーされ、21社の会社が様々な賞を受賞されました。

 ところで、「いい会社」とはどのような会社でしょうか。人によって「いい」という基準は様々だと思います。
 ホワイト企業大賞では「いい会社」とは、「社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にする会社」と定義しています。業績や利益を追い求めるのではなく、働く人たちが幸せや働きがいを大切にし、社会に役立つ会社であろうと努力を続ける会社を「いい会社」であると、ひとつの方向性を示しています。
 これは「方向性」であって基準ではありません。経営において「社員の幸せや働きがい」を大切にしている会社が、この賞をひとつの指針としながら、切磋琢磨して進んでいく学びの場でもあります。

 しかし、社員の幸せや働きがいとはどんなことでしょうか。
 給料が良い、休みが多い、福利厚生が充実しているという目に見えることもありますが、働きがいとはそれだけではなさそうです。アンケートを取ると、社員の人たちが充実して働いていることが見えてきます。
 この会社で働いていると自分が成長できる、自分が決めて仕事ができる(任されている)、他者に役立っているという実感がある、自分の個性が活かされていると感じる・・・。働く時間が充実した時間であるからこそ、前向きに働け、社員が協力しながら、もっと良い仕事をしようと助け合いながら頑張っている姿が見えてきます。だからこそ、こうした企業は総じて業績も伸び続けています。

 企業は業績をあげ、利益を出してことが求められます。だから、業績を大切にする会社は多い。しかし、大切にするものの順番が違うとその経営も変わっていきます。応募されている会社が、いちばん大事にされているのは「社員の幸せや働きがい」。それを追求していくことが業績や利益につながっていくという信念で経営をされている会社です。いちばん大事にするものの順番が「社員」なのです。

 昭和の時代から、他社と戦い、業績を追求する時代が続いてきた日本の中で、ホワイト企業大賞が示すこの方向性の経営は、まだ異端に見えるし、甘い考え方に見えるのかもしれません。
 ただ「どうせ働くなら楽しく働きたい、やりがいを感じながら働きたい」というのは、考えてみれば誰もが求めている普通の思いだと思います。いい会社づくりとは、ただその当たり前を大切にしていくことであり、人間にとって自然なことなのだと思います。

ホワイト企業大賞
http://whitecompany.jp/

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営

2023 年 01 月 06 日 11:36

地域から尊敬される会社

それぞれの街にはその地域を代表する企業があります。
 その中でも「〇〇さん」と地元の人が「さん付け」で呼ぶ、地域の人から親しまれ、尊敬されるような会社が存在します。北海道の六花亭さんや博多のふくやさんなどは、地元の人から長く親しまれている会社です。
 そうした会社は、もちろん素晴らしい商品を販売されていることや、買い物をする時の良い接客も評判を生み出しているのだと思います。それ以外にも、地元の行事に参加したり、地域の発展のために、地域貢献活動にも惜しみなく投資する姿勢なども、地元から尊敬されているのでしょう。
 しかし、いくら表面上で地域貢献活動をしたとしても、会社の実態をいちばん良く知っているのはそこで働く社員の人たち。働いている人が家族や友人から「会社はどう?」と言われた時に、「いい会社だ」と言うか、「あんな会社は・・」と言うか。社員の人たちが働きがいを感じていなければ、良い評判は生まれません。地域の評判はそこで働く社員の人たちの存在も影響しているのではないでしょうか。

 長野県の伊那食品工業さんも、地元の人たちが「伊那食品さん」と親しみを込めて呼び、地域から尊敬される会社のひとつです。会社という存在そのものが地域の人に迷惑をかけているからと、会社の敷地につくったガーデンを地域の人に無料で開放されているのは有名ですが、社員の人たちは、出勤時に車を右折して会社に入ると前の道路が渋滞になってしまうからと、少し遠回りになったとしても、みんなが左折で入るようにしておられるそうです。休みの日に買い物に行くときも、スーパーの店に近い駐車場は身体の不自由な人が利用する場所だからと、多くの社員があえて遠い場所に車を止めると言います。自分の会社の理念に共感し、誇りを感じているからこそ、会社から言われた訳でなくてもこんな行動をされるのでしょう。

 昔から、売り手よし、買い手よし、世間よしと、商売は「三方よし」が大事であると言われていますが、これからの時代に長く存続していくためには、やはり地域から応援され、尊敬されるくらいの会社にならなければいけないのかもしれません。その為には、まず自分たちの会社が働く社員の人たちを大切にし、社員の人から尊敬される会社であること。近江商人の言葉に「売り手よし」が先にあるのはそういう教えなのかもしれません。

カテゴリー : DOIT! 「いい会社」が実践する理念経営

2022 年 06 月 14 日 13:28

遠回りがいちばんの近道

 先日、ある企業の創業経営者とオンラインでお話をする機会がありました。その企業は私も以前に取材させていただいた会社で、業界の中でもCS・ESがずば抜けて高い会社です。
 いろんなお話を伺う中で、「毎日、ほんの少しの進化することを大事にし、それを何十年もやり続けてきた」「まだまだやるべきことがある」ということをお話いただいたのですが、その言葉がとても印象に残りました。
 例えば顧客満足を高めることを一気に行うのではなく、毎日毎日、社員が話し合い、みんなで少しずつ、昨日よりより良くする。社員に任せる範囲をその人の成長に合わせて広げていく。コミュニケーションの悪さを一気によくするのではなく、一人への挨拶から始めていく。その積み重ねを粘り強く続けていくことが、「大きな変化」を生み出していくと信じて、やり続けてこられました。

 私たちは、つい早く結果が欲しくなり、本や事例から「やり方」を学んできては、取り入れようします。しかし、そう簡単にはうまくいかないし、結果が出ない。結果が出ないと、「このやり方はダメだ」と次の「やり方」を探す。一気に変えようと思うからこそ、「効率的」で「成果が出やすく」、尚且つ「簡単な」やり方を追い求めてしまいます。
 例えば、いい会社の「やり方」を導入すれば、うちもうまくいくと考えてしまいますが、その「いい会社」は、その「やり方」に行きつくまでに、前述したような小さなことを積み重ね、その企業にあった「やり方」にたどり着いているはず。毎日の積み重ねなので、社員の人の納得感もある。
 もし、他社がそのいい会社の「やり方」(形)だけを真似たとしても、社員の人たちの納得感もないし、そこまでの積み重ねがないので、目に見えないノウハウがない。だから、形だけを早急に導入してもうまくいかない。本当に学ぶべきは「やり方」ではなく、そこに至るまでに社員の人たちと話し合い、何度も何度も失敗を乗り越えて、進化させてきた、その企業の「姿勢」(あり方)なのではないでしょうか。

 どうすれば、うまくいくか?どうすれば結果がでるか?と考えれば考えるほど、効率的で結果の出やすい「簡単なやり方」を真似しようとしてしまいますが、ただ、だいたいそうやって歩んだ「近道」は、結果として遠回りになってしまうことも多い。

 同じようなことをイチロー選手が言っていたことを思い出します。
「遠回りがいちばんの近道」
 急に変わることはないけれど、毎日、もっとよくなろう、もっとうまくなろうと、少しずつ努力し続けてきたイチロー選手ならではの言葉だと思います。
 イチロー選手と、最初にご紹介した経営者の共通点は「ここをめざす」という強い目標意識があること。そして、そのためには「近道」を選ばずに、その目標に向かって毎日、自分達で考え、反省し、少しずつ進化させていく「遠回りの道」を歩んでこられたこと。
目的地にたどり着くまでの「近道」と「遠回りの道」。どちらを選ぶかですね。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営 素晴らしい組織風土づくり

2022 年 05 月 30 日 17:37

社員を叱る理由

 最近、上司が部下を叱れないという話を良く聞きます。
 今の子供たちは褒められて育ってきたから、怒られると立ち直れない、逆ギレする。パワハラなどの法律もあって、みんながどう接していいか悩んでいます。

 令和の時代に昭和の話をするのはどうかと思いますが、「社員を叱る」ということでいつも思い出すのが、顧客満足度13年連続日本一を達成したことがある神奈川県のカーディーラー「ホンダカーズ中央神奈川」の創業者、相澤賢二さんのことです。
 創業した昭和の時代は、自動車業界は、訪問販売が主流でした。夜討ち朝駆けと顧客を訪問、買ってくれるまで粘る・・・。しかし、そんな無理な販売を続けていては、社員が幸せにならない。そう考えた相澤さんは、業界では誰もやっていなかった店頭販売に切り替えます。お客様に来ていただくには店に魅力がなければならない。顧客満足の向上に対して真剣に取り組むことで次第にお客様が増え続け、売り込みに走らなくても、お店でしっかりと対応していけば販売ができることを証明された会社です。今、店頭販売が主流になっていますが、その先駆けを作った会社です。

 そんな相澤さんが大事にされてきたのは「社員の幸せ」。貧しい家庭で育った相澤さんは、社員を本当の家族のように大切にされた経営者。「社員は家族」が信念です。せっかくご縁があって入社してくれた社員を立派な社会人に育ててあげたい。どこに行っても通用するような人、誰からも愛される人に育って欲しいと、社員に読書をさせたり、茶道を習わせたり、掃除や挨拶の大切さなど、業務とは関係のない「人づくり」を徹底的にやり続けてこられました。

 相澤さんは、社員のことを思うからこそ、時には厳しく叱ることもあります。社員が人として良くないことをした時は、「バカヤロー」と激しく怒鳴る。「二度とそんなことをしてほしくない」と思いを込めて厳しく叱る。ただ、その怒りをいつまでも引きずることなく、叱りきると翌日はニコニコとして普段のように接する。怒られた社員も最初は反発したり、不機嫌になりますが、その思いに触れると、「この人は本当に自分のことを思ってくれているんだ」と気づき、自分を変えていく。人の心が通い合う家族のような会社です。

 こんな話をすると「そんななことが通用するのは昭和の時代までだよ。今の時代は無理だ」と言われそうですが、「叱らない」ことは本当にその人のためになるのか。私も悩むことがあります。叱られることから、本当の愛を感じ、自分が悪かったと気づくような体験は、人が成長していく過程には必要なのではないのでしょうか。私も、昔、悪いことをして、親から「二度としてほしくない」「そんな人になってほしくない」と怒られたことがありますが、その時の親の何ともいえない「悲しい目」が今でも心に残っています。

 相澤さんに厳しく叱られ、「辞めてやる」と退職する人もいるのですが、その後、相澤さんは社内で「あいつはどうしているんだろう」「ちゃんとやっているんだろうか」と周囲に語り掛けていたそうです。そして社員が帰ってきたいと思えばちゃんと受け入れる。そんな出戻り社員が10人もいるそうです。
 なぜ、叱るのか?どれだけその人のことを思って叱るのか?厳しさも優しさも最後は「その人への愛」に尽きるのかもしれません。

カテゴリー : DOIT! 「いい会社」が実践する理念経営

2022 年 05 月 10 日 10:12

新人時代の3つの権利

 4月入社の新人の皆さんも、研修期間が終わり、現場に出て四苦八苦している頃だと思います。
 私も昔、活躍しよう、成果を出してやろうと意気込んで現場に立った日のことを思い出します。
 しかし、どんなに意気込んでも、最初からうまくいくはずはなく、先輩のようにはいきません。失敗して落ち込み、うまくいけば喜び、毎日が浮き沈みの連続でした。しかし、今思えば、そうして自分から挑戦して失敗して反省していくことで仕事の向き合い方や仕事の面白さを学んでいったように思います。

「新人には3つの権利がある」
 これは以前取材させていただいた美容室バグジーさんに伝わる1年目の新人への言葉です。
 1つが、失敗していい権利、1つは何でもやってみる権利、最後は何でも聞いていい権利。
 失敗を恐れずに、自分からどんどんやってみる。わからないことがあれば、何でも聞いてみたらいい。失敗を恐れて何もしない、挑戦しないようでは、これから先成長しない。この一年間で、「成長の癖」をつけてほしいということで、先輩が新人にこの言葉を教えていきます。

 確かに、自分自身も、新人時代は例え失敗しても、先輩たちに叱られましたが、「しょうがないよ」「また頑張れ」と温かく励ましてくれたおかげで乗り越えられた気がします。1年目に先輩が思い切ってやれと言ってくれたおかげで、「仕事は自分から取り組んでいくからこそ面白くなり、失敗してもそれを糧にしていけばいいんだ」というような、いい仕事観が醸成されたように感じます。

 そういう意味でも、社会人一年目の若い人たちは、3つの権利を行使して好きなようにやってみてほしいですし、成長癖をつけてほしい。同時に、新人を迎える側も将来を見据えたかかわり方をしてあげないといけないのでしょう。
 可愛い新人に対しては、ついあれやこれやと何でも教えてしまいがちになりますが、もしかすると、それが将来的にはマイナスなのかもしれません。やりたいことに挑戦させる、失敗させていい経験を積ませてあげる。仕事の面白さや成長の軌道を教えてあげることこそ、新人時代の最大の教育テーマかもしれないですね。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営

2022 年 03 月 01 日 16:15

お客様は「安い価格」を求めていない

 「お客様は安い価格を求めているのではない、価格以上の価値を求めているのだ」
これはコンビニの父と言われる、セブンアンドアイ・ホールディングスの鈴木敏文さんの言葉です。

 あたりまえのような言葉ですが、我々は安さに敏感です。だからつい、お客様も「安さ」を求めている、だから、価格を下げなければという感覚になってしまいます。この発想から、いろんな業界で価格競争が起こっています。

 ガソリンスタンドの業界も価格競争がずっと続く厳しい業界です。今、ほとんどがセルフ業態。同じ機械、同じような店が価格を競い合っています。安いガソリンは確かに消費者は嬉しい。しかし、売り手は利益を削ることになります。やればやるほど人件費や無駄なサービスを削って利益を出さなければなりません。無人化、セルフ化・・・人を介在しない業態がどんどん広がっています。しかし、それもそろそろ到達点。どこも同じようなお店になり、消費者は違いがわかりません。だから、また価格競争が起こる。
 今はまだガソリン車が走っているから成り立っていますが、カーボンニュートラルの時代の中で電気自動車や水素自動車が増えてくれば、給油する人は減り、もっと競争が激化する。どれぐらいの店が生き残れるのでしょうか。

 先日、良い経営を勉強されているある地方のガソリンスタンドを訪問する機会がありました。そこは、従業員は3人だけ、経営者も前線で働いている小さなお店です。近くにはライバル店が何軒もある厳しい環境ですが、なぜか、お店にはひっきりなしにお客様が来店されていました。他店と同じセルフ型の店ですが、スタッフは洗車やオイル交換に忙しく働き、お客様が車を降りて、スタッフと会話する姿も見られます。

 特別に価格が安い訳ではないこの店の人気の理由は何でしょうか?常連のお客様に「なぜ、この店を選んでいるのですか?」と理由を聞いてみると、こんな話をされました。
「もちろん安いお店はいろいろありますよ。でも、この店はスタッフがいい。気さくに話せるし、ちょっとしたことでも相談に乗ってくれる。どうせ給油するなら、気持ちいいスタッフがいるところで入れたいじゃないですか」

 このお客様が求めていたのは、価格ではなくスタッフの対応の良さでした。もちろん世の中にこんなお客様は少ないのかもしれません。しかし、価格以上の価値を感じれば、お客様は来てくれる。
 この店の社長は給油する車とお客様の顔を見ただけで、ほとんどのお客様の名前を覚えておられます。そして働くスタッフも車の知識が豊富で、お客様から頼りにされているようでした。

 お客様は「安い価格」を求めているじゃない、「価格以上の価値」を求めている。
 どの業界も同じことかもしれませんね。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営

2022 年 02 月 15 日 14:03

他人(ひと)に好かれる人になる

 顧客満足や社員満足の高い会社として全国に知られる美容室バグジーでは、新入社員は初任給をもらったら、これまで育ててもらった感謝をこめて親に何かをプレゼントをし、その体験をレポートに書いてくるという決まりがあります。初任給の中に親孝行の手当がついてくるなんて、なかなか他ではされていないのではないでしょうか。

 新入社員は、どんなことをすれば、親が喜んでくれるかと思いを巡らし、親が喜んでくれるだろうモノを買ったり、食事に連れていったりするのですが、ある新人はこれまで父親と関係が悪く、何を買ってあげたらいいか悩んでいました。そこで母親に相談すると、お父さんは「安全靴がいいのでは」と言われました。その子はそれまで安全靴がどんなものかわからなかったのですが、そこで初めてつま先に指を保護する機能が付いた靴だと知り、その時、「お父さんは、こんな危険な場所で働いてくれていたんだ」と、親が苦労して自分を育てくれたことに感謝の気持ちが湧いてきて、涙があふれてきたそうです。

 なぜ、バグジーでは、こんなことをされているのでしょうか。代表の久保社長は、とにかく社員一人ひとりが人生を豊かに幸せに送ってほしいと思っています。そして、幸せな人生を送るために最も大事なことは何かと考えていった時に、成功するには「他人(ひと)に好かれる人になること」だと気づきました。お客様との関係においても、社員同士の関係においても、また親と子供の関係でも、社会生活の中でも、他人から好かれる人はすべてが上手くいきます。成功者はみんな人から慕われ、人が集まってきている人です。

 では、他人に好かれる人になるためにどうすればいいのか。久保社長はその中でいちばん大事なのが「感謝の心」だと言います。感謝できる人は、お客様からも先輩からも好かれます。感謝できる人は謙虚になり、自分をもっと向上させていこうと思います。しかし、感謝の気持ちはその人の内側からしか湧いてこないもの。「感謝が大事だよ」といくら言葉で教えても、なかなか身につくものではありません。だから、バグジーでは、こんな「親孝行の体験」を通して、気づいてほしいと思っておられるのです。

 他人に好かれる人になる。これは松下幸之助さんなど数々の著名人が「心の師」とされている中村天風さんもそのことの重要性を説かれていますが、確かに、どんなに知識があって頭が良くても、他人から好かれない人は成功できないのでしょう。ビジネスだけでなく、社会で幸せになるために、最も大切なことかもしれません。そう考えると、新入社員の時から、こんな「心のあり方」を教えてもらったり、体験させてもらえるということは、本当に素晴らしいことですね。

カテゴリー : DOIT! 「いい会社」が実践する理念経営

2022 年 02 月 01 日 14:13

見えないものの大切さ

 昔から、「見えないものが大切」だと言われます。
 年収、住居、所有しているもの・・・見えるもの
 性格、命、心、幸せ、信念、情熱・・・見えないもの

 会社という組織も同じかもしれません。数字に表せないものの方が大事な気がします。
 例えば、組織の規模は人数や支店数で表すことができますが、その会社で働く人がどれだけ幸せを感じているか、働きがいを感じて楽しく働いているかなどは見えません。経営理念は言葉として見ることができますが、その理念への経営者がどれだけ情熱をもっているか、社員がどれだけ共感しているかまでは見えません。

 会社という組織を考えた時に、働く人同士の「つながり」も、そんな目に見えない、大切なもののひとつではないでしょうか。人間にとっていちばん辛いのは、たくさんの人がいるのに誰からも相手にされなかったたり、無視されることだと思います。一緒に働いているのに一言も会話もない職場、相談する人も、心配する人もいない職場では、安心して働けません。
 そうではなく、先輩が後輩を気にして声をかける。後輩も先輩のことを思いやる。同僚同士の間でも、お互いが関心を持ち、励ましあったり、心配したり、協力する。そんな「つながり」や「一体感」が増えていけば、メンタルがおかしくなることもないでしょうし、仕事のパフォーマンスも上がっていくに違いありません。

 そんなことを考えている時に、先日、ある会社のイベントに参加させていただきました。その日は全社員が集まる勉強会があるのですが、みんな朝早くから、昼に食べるカレーの準備を行い、午前の勉強会が終わったら、みんなでそのカレーを食べ、また勉強会をするというプログラムです。
 その作る工程が実に楽しそうでした。先輩も後輩も関係なく、みんなでカレーを作っていきます。冗談を言い合ってみたり、鍋奉行のような人が出てたり、みんなが和気あいあいと協力し合っています。そんな様子を拝見しながら、改めてこういう仕事以外の場が組織にとって大切だったんだなあと感じていました。

 「見えないもの」は見ようとしないと見えないものだと思います。
 冬の空は空気が澄んで星がきれいに見えますが、心に余裕ない人や関心がない人はただの夜空。
 その人が大事だと思えば見えてくる。大事じゃないと思えば見えなくなる。
 何を大事にしていくか。そこが問われているのかもしれません。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営

2022 年 01 月 12 日 13:34

人生お一人様一回限り

 人生をかけるだけの価値のある情熱をもって取り組める仕事。
 そんな仕事に出会った人は、困難や苦労はあったとしても、毎日が充実感であふれ、きっと幸せな毎日を過ごしておられるのではないでしょうか。

 15歳の時に、自分の人生をかける仕事に出会い、それ以来、死ぬまでひとつの仕事に情熱を傾け、真っ直ぐに生きてこられた方が、先日、交通事故で亡くなられてしまいました。

 その人は、越智直正さん。
 「靴下屋」「tabio」のブランドで有名なタビオの会長です。靴下一筋およそ70年。丁稚奉公から28歳で会社を興し、今では国内に300店、海外にもお店を出店するほどの企業に成長しています。
 私どもも、以前、DOIT!シリーズで取材をさせていただきましたが、私はそれ以前からお付き合いがあり、どんな時も明るく、どんな時も一生懸命なお人柄に惹かれ、心の師として仰いでおりました。

 越智会長の人生は、本物のいい靴下を作り、お客様に喜んでもらう。この一点にありました。海外の安い靴下に日本の靴下産業は衰退していく中で、「業界の良心たれ」「良品を適正価格で」「正義とともに発展する」という理想を掲げ、本物の靴下を世の中に広げてこられた方です。

 越智さん曰く、良い靴下というのは、履いた時にわかるそうです。靴下を履いているとその感覚が残ってしまう。だから、越智さんは毎日裸足で、サンダル履きで暮らし、出来上がった靴下を自分の皮膚感覚で試し続けておられました。また、いい靴下は「噛んでみたらわかる」とも言われていました。新品の靴下にそっと歯を当て、しばらく噛み続ける。そして、離した時に歯型が残らず、復元してくるのが良い靴下だと教えていただきました。
 裸足でサンダル履きの経営者が、靴下を噛んでいる様子をみて、最初はびっくりしましたが、越智さんにとっては、他人にどう映ろうが関係ないことで、とにかくいい靴下を作りたいという思いを持ち続けた方でした。

 DOIT!の取材の時に、「しかし、何年やっても、これや!っていう、いい靴下はできんのですわ。だからこんなわしでも何十年も続けてこられたんだ思います。」と言われたましたが、「これでもか」「これでもか」と自分の理想に向かってチャレンジし続ける越智会長の生き様は本当にまぶしく、私の憧れになりました。

 「あんた、そんなところで止まっていてええんか?」。

 そんな言葉は実際にはいただいていませんが、何か自分が悩んでいる時に、いつも越智さんから言われているような気がしていました。

 越智会長は、以前、講演でこんなことを言われたそうです。
 「わしが死んだとき、火葬場で何も残らんと思う。毎日完全燃焼しているから」
まさに、そんな人生を送ってくられた方でした。

 「人生お一人様一回限り。情熱をもって生きよ」
 越智さんからいただいたこの言葉をかみしめながら、自分も仕事に全力投球していきたいと思います。

 思いがけない事故。本当に悔しい思いでいっぱいです。謹んでお悔やみ申し上げます。

カテゴリー : DOIT! 「いい会社」が実践する理念経営

私たちが大切にしていること