TOP > 代表 西川の気まぐれ日記

2024 年 07 月 10 日 13:26

やりたいことしか続かない

 誰でもそうだと思いますが、人間にとって、やりたくないことを続けていくことは本当に苦しいこと。継続するには、それが本当に心からやりたいことでなければ、継続しないのではないかと思います。
 個人もそうですが、企業においても、働く人がやりたいと思ってやっていなければ、いつか破綻していく。人間の本質に沿っていないことを持続させていくことは難しい気がします。
 本来、自分のやりたいようにしたいというのが人間だとすれば、行動を型にはめる「マニュアル」も長続きしないのかもしれません。企業とすれば、「一律なサービス」を提供しようと接客もマニュアルにしますが、顧客としていろいろと見てきても、マニュアル通りの対応をしている人で、楽しそうな人はあまり見たことはありません。もちろん「悪くない対応」なので不満はありませんが、気持ちよいという感情にはなりません。不満を出さないサービスは提供できていても、働く人にとってはどうなのか。短期間のバイトなら我慢ができても、本当にやりがいを求める人にとって魅力はないかもしれませんが、義務感ややらされ感の顧客満足が長続きする訳がない。そんな気がします。
 型にはめない対応を実現するのは、本当に難しいことなのでしょうか。「自分がやりたいと思ったことを、やりたいようにやりなさい」と社員に任せると悪いことが起こるのでしょうか。もちろん、企業である限り、何でもできる訳はなく、できる範囲は制限されると思いますが、働く人の「やりたいこと」を信じてやってもらうことは、そんなに難しいことなのでしょうか。
 昭和の時代は、その仕事が嫌でも、義務感でもやらされ感でも、我慢してやることが当たり前と言われてきましたが、我慢しても、やはりやりたくないことは続かない。
 あなたは、今、やりたいことをやれているか。働く人にも問われていることなのかもしれません。

カテゴリー : いきいき働くための仕事の姿勢 これからの時代の人財育成

2024 年 07 月 03 日 10:29

なぜ、部下が指示通りにしか動かないのか。

 部下が言われたことしかやらない、指示した通りにしかない・・・。そんな悩みを聞くことがあります。世代の特性として言われることがありますが、本当にそうなのでしょうか。YouTubeなどの動画などで、若い人が自分の好きなことに挑戦し、失敗しながらも楽しく活動している様子をみると、今の若い人が指示通りにしか動かない、受け身の世代だとは思えません。

 では、なぜ部下は指示通りにしか動かないのか。ある会社の経営者とその話をしていると、その方は「それは上司が指示をするからだ」という考えをされていました。その会社では、以前から、働きがいこそ社員の幸せであると考え、そうした働きがいを削ぐ要因となる指示命令はしないということを大事にし、それが会社の文化になっています。上司が指示をすることはなく、それぞれが自ら考えて行動しています。
 誰も指示しない。確かに右も左もわからない入社したての人は戸惑うことも多く、悩むこともあるそうですが、自分で考えることが当たり前になってくると、それが普通になり、数か月も経つと、誰に指示されなくてもやるべきことをやるようになるそうです。

 確かに、上司が指示をすると人は動く。しかし、その指示を受けることが当たり前になると、指示を待つようになる。指示されたことをやっているうちは良いかもしれませんが、指示されたことだけをやっていると、ロボットのようになり、多くの場合、仕事が面白くなくなります。面白くなくなるとやる気も出ない。そうなってくると、指示されたこともしたくなくなる。その人の本来の考える力や面白さを奪っているのは、上司の問題かもしれません。
 こうすればいいと指示をしたり、アドバイスをすることは確かに有効で、瞬間的には、部下もその方が楽なのかもしれませんが、本当の問題は、部下がその時に出来たはずの「悩む力」や「考える力」が育たなくなること。先ほどの経営者の会社では、上司は部下の問いに対して答えを出すことはせず、「どうすれば、いいと思う?」という質問をするそうですが、本当に部下を大切に思い、成長してほしいと思うからこそ、このような質問になるそうです。

 なぜ、部下が指示通りにしか動かないのか。
 そのように育てているから、そうなってしまう。それが答えかもしれません。

カテゴリー : これからの時代の人財育成

2024 年 06 月 04 日 10:48

100-1=0

 帝国ホテルに入社すると、新入社員はまず、「100-1=0」というサービスの心得を教わるそうです。
 これは、社長、会長を歴任された藤居寛氏の教えとされています。
 ホテルでは、お客様をドアボーイがお迎えし、フロントでチェックイン。そして、部屋に案内され、滞在中レストランで朝食を食べたり、ロビーでくつろぐ。帰りに精算し、最後にまたドアボーイがお見送りをします。滞在中にいろんなスタッフからおもてなしを受け、こうした一連の体験を通して、良ければ「またこのホテルに来よう」と思います。
 しかし、この体験中に、いろいろな人がどのような素晴らしい対応をしても、たった一人でも、ミスを起こしてしまえば、すべてが台無しになってしまう。たったひとつのミスで、「もう、このホテルを利用しない」ということにもつながることもある。「100-1は99でなく、0」なのだ。帝国ホテルはこの意識を最も大切にしている。そう新人に教えるそうです。
 確かに、私が街のレストランで食事をするという時でも、いくらいい食事をし、いいサービスを受けて満足していたとしても、帰ろうとした時に、最後のレジ対応で嫌な気持ちになったとすれば、そのレストラン全体の印象が悪くなります。場合によっては、「もう利用しない」と思うかもしれません。

 普通「100-1=99」と考えます。1つのミスくらい大きな影響はない。例え一人のお客様を逃がしたところで、そんなに大したことはないと考えがちです。これは、高いブランドを誇る帝国ホテルだから通用することだ。顧客の期待も大きく、小さなミスでも「あの帝国ホテルが・・・」ということになる。そういう高級ホテルだから「100-1=0」の高い意識が必要なので、私たちには関係ないと考える人もいるかもしれません。

 ただ、最近でも、例えば、チェーン展開している企業のたった1店のトラブルが全国に影響したり、バス会社のたったひとつの事故が倒産まで追い込まれることがあるように、たった一人が「まあいいか」と手を抜いた結果が、マスコミやSNSで広がり、経営にまで大きな影響を与える時代です。「あの企業はとてもいいサービスをしてくれる」という期待でお客様が来る。それは、それまでの期間に、いろんな先輩が積み上げてきた信用・信頼があるからこそ。それが一気に崩れてしまうのがマイナス1の怖さ。その陰にあるのが、自分くらいいいか、これくらいいいかというような「100-1=99」の意識なのでしょうか。

 しかし、そうはいっても、ミスは誰でも犯してしまうことがある。その時に99人がその一人を見捨てず、みんなでカバーしていくことも大事なことかもしれません。
 いずれにしても「100-1=0」はプロの仕事としての基本的な姿勢。サービス業のみならず、すべての業種に必要な姿勢だと思います。

カテゴリー : 「いい会社」が実践する理念経営 これからの時代の人財育成

2024 年 05 月 14 日 11:11

目的思考

 新入社員が、最初に身に付けるべき仕事の姿勢のひとつに、目的思考というものがあると思います。
 目的思考とは、仕事に取り掛かる前に、「この仕事は何のためにやるのか」と目的と意味を理解すること、そして次に「どうやるか」という手段を考えることです。私も、若い時に、この大切さを先輩から徹底して教わりました。そもそも、仕事をする時に、なぜやるのかを自分が納得していなければ、単なる作業になってしまいます。ただ「部屋を片付けろ」と言われても、何のために片付けるのかがわからなければ、工夫のしようがありません。意味がわからずする仕事ほどやる気がなくなるものはありません。
 しかし、今の時代は、「どうすればいいか」というやり方や手段から入る人も多くいるようです。とにかく、あれこれ考えず、上から言われたことをやる。頭の中は「どうやるか」だけ。手段思考というのでしょうか、仕事を処理するロボットのように働く人もいます。確かに仕事は早く終わるのでしょうが、そもそも、目的を理解していなければ、良い仕事ができたのか、うまくいったのかもわかりません。もっと、良いやり方があったのではないかと反省することもない。処理型仕事を繰り返しているだけでは、人間らしく考える力がなくなってしまいます。きっとこうした仕事の中では、新たなイノベーションも起きにくいでしょう。

 「そもそも、この仕事は誰の為にやるのか、世の中にどのような結果を生むのか。」そんなことは、いちいち考えなくても仕事はできるのかもしれません。ただ、自分の仕事が、例え、途中段階の仕事であったとしても、仕事の最終目的がわかっていれば、前工程や後工程の仕事にも関心が湧くはずですし、自分の役割もよりわかる。そもそも、仕事の意義・使命が腹に落ちれば、やりがいも生まれます。

 作業をやる、処理をするならAIがやる時代。目的思考はますます重要になってくると思うのですが、「そもそも、なぜこの仕事をやるんですか?」と、上司に聞いた時、もしかすると、上司の人の中にも、ちゃんと答えられなくなっているのかもしれません。「上がやれと言ってるから、つべこべ言わずやれ」。そんな理由をいわれても、それでは納得できません。
今日、自分のやるその仕事は、「そもそも、なぜやるのか、何のためにやるのか」。毎朝、自分に問うことが大事なのかもしれません。

カテゴリー : これからの時代の人財育成

2024 年 02 月 20 日 15:36

若手に教えるもの、伝えるもの

 どうすれば、若手を育てられるのか。今、若手社員の育成に悩んでいる方が多いと聞きます。世の中全体の人手不足の中で、特に伝統工芸や建設、料理などの職人の世界でも人の育成が課題だと言われています。
 以前の職人の世界は、「技術は盗んで覚えろ」というような風潮があり、親方は教えず、若手は下積み仕事を続けながら、親方のやり方を見ながら覚えるという教育が一般的でした。しかし、それでは今の時代に合わない。優しく指導しなければ人が辞めてしまう時代です。しかし、だからといって、「こうしろ、ああしろ」と手取り足取り、やり方ばかりを教えても、本物の職人には育たない。一人前の職人を育てるということは、本当に大きな課題だそうです。

 そうした世界の中で、ある職人の親方が、これからの時代の職人の育成の仕方として、次のようなことが大切ではないかと言われていました。若手の職人育成で大事なことのひとつ目は、やはり「仕事の意義」を教えることではないか。この仕事がどれだけ人や社会の役に立っているかがわからなければ、仕事に情熱もわかない。だからこそ、若手に、今、どんな仕事をしているのか。誰の為になるのかという仕事の意義を教えていくことが大事だと言われています。もちろん、やりがいだけでは人が辞めてしまうので、しっかり給料を払うことは大前提ですが、仕事の意義をしっかり伝えていかないといい職人には育たないと言われています。

 そして、次は「学習の方法」を教えること。その人が言う学習の方法とは、挑戦と失敗による学びの大切さ。ネットで調べれば、すぐにやり方がわかる時代であっても、あえて教えずに失敗させる。挑戦の機会をどんどん与えて、失敗させる。大切なのは、若手がその失敗の中から、何かを学び、活かしていくということに気づいてほしいということでした。

 そして、もうひとつが「努力の仕方」。努力というのは単なる根性論ではなく、一人前になるためのプロセスの踏み方です。例えば、畳を縫うのが遅い人がいるとして、基礎的なやり方だけを身に付けるだけでは仕事は早くはならない。身体の向きや針への力の込め方など、その人にあったやり方を身に付けていかないといけないそうです。だからこそ、技術を反復練習し、自分に合うように微調整しながら、また繰り返し練習するしかない。微調整と反復練習の大切さを教えていくそうです。

 確かに、どんな仕事もある程度まではマニュアルで教えることはできる。しかし、それも限界があるし、面白くなっていかない。自分で考えて行動していかなければ、本物のプロにはなれません。これは、職人という世界だけでなく、どんな仕事でも同じことかもしれません。
 「教えない」「見て学べ」ということは時代遅れなのかもしれません。しかし、教えてくれるのをただ待っているだけの人や“先輩が優しく教えてくれない”と文句や愚痴をいうだけの人が成長するはずがありませんし、「一般的なやり方」だけを学んだだけで、一流のプロになれるはずもない。やはり、自ら学びに行こう、盗みに行こうという仕事への情熱が沸いてこなければ、本当の成長はありません。そう思えば、その仕事の意義ややりがいを教えてあげることや、失敗をさせ、それを糧に自ら成長していく方法を伝えていくことは、何よりも大事なことなのかもしれません。
 人の育成は、その人によって変わるもの。何が正解がわからないのが育成ですが、私たちは、若手を一人前のプロに育てるために、何を教えていけばよいでしょうか。ネットで簡単に知識や技術が学べる時代になってきているからこそ、教えることの中身を考えていかないといけないのかもしれません。

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2023 年 12 月 18 日 15:51

主体性を育てる

 自ら考え、自ら行動する。若手育成において、昔からよくこの大切さを言われていますが、何が正解か誰もわからない、やってみないとわからない時代にあっては、ますます、大切になっています。
 しかし、なかなかそうならない。若手の育成に悩んでいる人のお話をよく聞きます。
 新人も頭でわかっていても学生時代に手とり足取り教えられて育っていると、何かやろうにも、失敗が怖く、なかなか前に踏み出せない。自ら考え、自らやるというのは若手にとって思った以上に難しいのかもしれません。
 しかし、社会人ではそれではなかなか難しい。何事も最初が肝心と言いますが、新人の頃に「自ら」を身に付ければ、その後の成長も違ってきます。わからないことばかりの新人には、何でもしてあげたくなりますが、手をかけすぎると「自ら」が育たない。教える側が問われています。
 例えば、何かわからないことがあった場合、「教えてくれない」「教わっていない」とふてくされたり、待っていられるのは学生時代ですが、社会人なら「自ら聞きに行く」か「自ら調べる」の2択しかありません。こんな基礎から教えてあげないといけないのが今なのかもしれません。
 我が家では、だいぶ前に子育ては終わりましたが、うちの場合、子どもが小学生の頃、朝子どもが起きてこなくても、親が子どもを起こしにいくことはしませんでした。寝坊するのは自分の責任。親は起こさないと決めているので、自分で起きるしかない。親のせいにもできません。時間通りに起きるようになりましたが、こんな子育ては昭和の時代。そうでない環境で育ってきた人も増えています。
 しかし、今の若い人は社会に役立つ気持ちも高く、素直でいい面がたくさんあります。いかに良さを伸ばしてあげられるか。変わるべきは教える側かもしれません。

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2023 年 07 月 26 日 10:22

経験から学ぶ

 人は本から知識を得たり、話を聞いて学ぶことがありますが、人の学びの7割は経験からの学びだそうです。
 そう考えると、確かに今の自分の行動も、過去にしてしまった失敗から学んだことや、成功の体験を活かしてやっていることがほとんど。可愛い子には旅をさせろといいますが、子供も大人も経験をしながら成長をしていくのが人間なのかもしれません。
 しかし、どんなに経験をしても、ただ後悔をしたり、喜んだりしているだけでは、そこからの学びは少なく、次に活かしていくためには、経験を上手に活かす習慣が必要だと言われています。
 そのひとつが、体験後の「振り返り」。一流のスポーツ選手も練習後に振り返り、良かったことや課題を記録する日誌をつけるそうですが、仕事でも、良い振り返りをしていくことが大事だと昔から言われています。振り返りをする目的は、体験を次に活かすためですが、つい、うまくいかなかった時は、あれがダメだった、ここが悪かったという追求の場、反省の場になりがちです。逆に、上手くいった時は、良かった良かったと拍手をして終わってしまうこともあります。日報や日誌も振り返って学びを次に活かすことが目的のはずなのに、行動や体験を記録するだけになることもあります。
 良い振り返りとは、なぜ上手くいかなかったのか、次に気を付けるべきことは何かと考える時間をつくって、教訓を引き出していくことだと言われています。失敗した時も、そこから何を学んだか。成功した時も、そこから何を学んだか。常に経験したことから、教訓を引き出そうという習慣が大事なのかもしれません。
 教訓は、同じ仕事をする時の成功確率を高めると同時に、他の仕事にも生かせます。
 今は、誰も正解がわからないVUCAの時代と言われていますが、過去の知識が役に立たなくなっていく時に、経験を活かしながら進んでいくことが、ますます大事になっていく時代なのかもしれません。

カテゴリー : これからの時代の人財育成

2023 年 06 月 20 日 14:39

働きがいと若手の成長

 今、若い人の育成に課題を抱えている企業が多いそうです。主体性がない、指示待ちになってしまう人が多い。3年も経たずに離職してしまう。教育に悩んでいる会社は多いと思います。
 どれだけ良い待遇であっても、この場所では自分は成長できない、働く意味がないと感じたら、大企業でも辞めていく人もいると聞きます。若い人たちがどうすれば成長してもらえるのか。なかなか答えが出ない問題です。

 そんなことを考えているとき、いつも通っている美容室に行きました。昨年から私のシャンプーを担当してくれる今年2年目のスタッフの方と話をしていたのですが、この仕事が楽しいと感じているようで、日々の仕事が充実している感じが伝わってきました。
 この会社ではスタッフが美容師としてデビューするまで綿密な教育カリキュラムがあり、シャンプーやカットなど、何十種類もある技術を自分で身に付け、社内テストに合格しなければお客様にすることはできないという決まりがあるそうです。アシスタントは、お客様の髪を切ることはまだできませんが、技術を身に付ければつけるほどできることが増え、お店はより回るようになります。
 ただ、1年目は仕事を覚えることに必死で、心に余裕がなかったそうです。しかし、だんだん先輩の手伝いができるようになってくると、ありがとうと言われることも増え、「少しだけだけど店に貢献できている」という手ごたえも感じるようになってきたとか。去年合格した「シャンプー」も、一生懸命やっているとお客様から「気持ちよかったよ」と褒められる場面も出てきて、またやる気が出る。この4月に初めて後輩ができ、人を教える立場になり、それが自分の成長を見つめるいい機会になっているようです。
 「働きがい」という少し大げさかもしれませんが、彼女は少しずつ働くことの楽しさや喜びを感じるようになってきたのかもしれません。今は、次の技術の習得と後輩の成長支援をしていきたいと話してくれました。

 自分が成長する嬉しさ。人に役立てる嬉しさ。誰もそうだと思いますが、一度この喜びを体験すると、仕事の意味が変わってきます。仕事はただお金を稼ぐことだと思っていた人が、働くことにそれ以上の意義を感じる瞬間。「働きがい」を感じれば感じるほど、もっと成長したい、もっと頑張ろうと思えるのではないでしょうか。1年目、2年目の最初の頃に、どれだけこの「働く喜び」を感じさせてあげられるか。若手の育成はここにかかっているような気がします。

カテゴリー : これからの時代の人財育成

2023 年 01 月 12 日 10:23

あくなき向上心

 一次的に繁盛していても、すぐに飽きられてしまうお店もあれば、何年も繁盛し続けるお店があります。いくら優れた商売でも、時代が変化する中で、同じことをしていてはお客様に飽きられてしまいますし、他店が進化すると差がなくなってしまいます。サービス業に限らず、どの企業でも永続的に繁盛し続けるということは大変なことです。現状に満足せず、常に進化していこうという姿勢がなければ、何十年も支持され続けることはできないと思います。
 36年もの間、顧客満足日本一に輝く旅館「加賀屋」さんは、全国にファンがいる老舗の会社ですが、昔から、そんな評判に満足せず、常により良いおもてなしを追求してこられた会社です。毎月の会議で真っ先に話されるのは業績ではなく、客室で集められた「お客様の声」を社長を筆頭に全員で確認するところから始まります。そして少しでもご不満があれば、すぐに改善をする。お客様に喜んでいただける旅館づくりのために、常に地道な取り組みを続けてこられてきた旅館です。
 そんな加賀屋さんも、ある時、CSの評価が全国3位に落ちてしまい、36年間守り続けてきた日本一の座を明け渡す事態があったそうです。代表の小田さんは、この時、「もしかすると私たちの中に“自分達は日本一であり、このままで良いのだ”という慢心があったからかもしれない。」と、創業から大事にしてきた加賀屋のDNAの形骸化に危機を感じ、おもてなしを見直していこうと、顧客の声からの改善のサイクルを短くしたり、暗黙知だったおもてなしのDNAを明文化して全員で共有するなど、様々な取り組みをされたそうです。その結果、一年後には日本一に返り咲くことができたそうです。
 誤解のないように申し上げますが、加賀屋の社員の人たちは、日本一の旅館であることに誇りを持ち、それに恥じないおもてなしを追求されている方ばかりです。それでも、どこかに慢心が出てきてしまう。誰でもそうだと思いますが、うまくいっている時は、どうしてもこのままで良いと安心してしまいます。そうした中で、加賀屋さんが日本一であり続けてこられたのは、どのような時も「お客様の喜び」を第一に考え続け、常に今のままではいけないという危機感を持ち続けてこられたからだと思います。
 ある方が、「進化・向上する会社しか人財は育たない」と話されていましたが、確かに同じことを繰り返している会社で人は育たちません。やりがいもなくなってしまうのでしょう。加賀屋さんが、いつも会社全体でより良くしよう、もっとよくしようと取り組まれていくことは、お客様の満足だけでなく、働く人たちの誇りややりがいにつながっています。現状に満足することなく、常に創意工夫する。そのあくなき向上心こそ繁盛し続けていくために最も大事な価値観ではないでしょうか。

カテゴリー : DOIT! これからの時代の人財育成

2022 年 11 月 22 日 17:54

顧客満足向上活動

 先日、関連会社の顧客満足向上を推進されている方から、顧客満足の改善活動で一部の現場の社員の人たちが悲鳴をあげているというお話を聞きました。それぞれの現場に顧客満足調査のデータが送られ、その改善点を洗い出し改善する活動なのですが、いくらやっても次々と改善点が出てきてしまう。「もうしんどい」「きりがない」という声が出ているそうです。ここ数年、日本中でCS意識が高まり、サービスのレベルが年々高くなる中で、お客様の基準が高まっていますので、まさに終わりがないのがCS。その悲鳴もわかる気がします。
 しかし、私も様々なCSの高い会社を見てきましたが、そうした「きりがない活動」に全員が前向きに取り組み続けている会社もあります。目標が高くなるほどやることのレベルが上がり、確かにハードになっていきますが、一方では疲弊感になり、一方では喜びになる。なぜこんな差が生じてしまうのでしょうか。

 活動が義務感になってしまう時。ひとつは本当の目的を見失ってしまっている時があります。子供の頃の勉強もそうでしたが、親からテストの点数を責められたり、あれをしたか、これをしたかと行動ばかりを指摘されると、勉強の本来の目的がわからなくなり、勉強が嫌になる時があります。もしかすると、疲弊感を覚えてしまうのは、顧客満足調査の数値をあげることや決められたおもてなしの行動をちゃんとやることが目的になってしまっているのかもしれません。もちろん大人ですから、頭ではわかっているはずですが、数字で迫られるとついそこに気持ちがとられてしまいます。

 人からの命令を受け、ただやっていると、「させられている」と感じてしまいます。どこかで決まったことを「やれ」と言われる。自分が納得することなら良いのですが、納得できないこともある。でもやらなければ怒られる。そうした中で「させられる」という気持ちが生じる。させられるから長続きしない。手を抜きたくなる。そしてまたCSが下がる。誰も悪くないのに悪循環が続きます。

 やはり、人は何のためにやるのかと納得して働きたい、決める場に参加して自分の意見もしっかり言いたい。やるなら、自分が納得したことをやりたいと思うのが普通の人の心。しかし、全員が参加するのは難しいし、指示をしてやらせる方が早い。受ける側も会議に時間を取られたくない。それぞれが良かれと思いやっていっていることが結果として悪循環になる。「やらされる」をなくすにはどうすればいいのでしょうか。

 解決策はそれぞれの状況で違うはずですが、顧客満足の高い会社の活動をみていると、ほとんどの会社が社員が参画する場を大切にする風土があります。なぜやるか、何のためにやるのかを徹底的に話し合い、全員で決めていく。時間はかかるやり方かもしれませんが、納得感は高まります。こうした風土を地道につくっていくことが、もしかすると長期的にはいちばん成果で出て早い方法かもしれません。

カテゴリー : これからの時代の人財育成

2022 年 11 月 08 日 17:55

やる気スイッチ

 時々、塾などのCMで「やる気スイッチ」という言葉を聞くことがあります。
 「やる気スイッチ」というのはどんなことなのでしょうか。
 褒められてやる気になる、叱られてやる気になる。確かにスイッチのようなものがあるのかもしれません。
 やる気スイッチを「押してあげる」という代表的なものは「褒める」こと。子どもは(大人も)人から褒められると嬉しいので「褒める」とやる気になります。その上、ご褒美などをもらうとさらに嬉しいので、また褒められようともっと頑張る。ただ、こうした外からのやる気の付け方は気を付けないと依存症のようになることもあるそうです。
 先生や親にもっとよく褒められたいと、人の顔色を見るようになる。いつも褒められていた人が、「出来て当たり前」とみられるようになり褒められなくなると、今度は不安になる。褒めてほしい、認めてほしいと他人の評価が気になる。「褒める」ということは確かにやる気を高めることですが、扱いに気を付けなければ却って不安な人を増やすことになりかねません。

 そもそもやる気は自分の中のもの。人に押されなくても、自分で勝手にやる気が高まることもあります。
 例えば、仕事の全体像が見えず、言われた仕事をやるだけ、一部分の仕事をやっている感覚の若手の時にはやる気がわかなかったのに、年数が経ち全体を任されるようになると、責任と共に仕事の本来の目的や意義がわかってくるようになる。
 「自分の仕事はこんなにもたくさんの人に影響を与えているのか。こんなにも喜んでくれる人がいるのか。」仕事の意義、仕事の面白さがわかってきた時に「やる気スイッチ」が入ります。誰かに押された訳でなく、意義がわかった、面白さに気づいたという時に、自分の中で勝手に入るスイッチです。若い人をみていると「最近、目つきや顔つきが変わってきたな」と感じる時がありますが、やる気スイッチが入った人は雰囲気や行動が変わってきます。こちら側のやる気は、他人の評価などを気にしない、良質なモチベーションです。

 そもそも、人に押されて「やる気」になる、ならなかったりするのは自分の人生を他人に委ねているようなもの。本当は自分がやりたいからやる、自分が面白いと思うからやるという「やる気」が本物のやる気。人に左右されるやる気より、ずっと続く持続的なやる気こそが、本来大事にすべきやる気だと思います。

 褒めるにしろ、叱るにしろ、そのことで、その人が仕事の意義や面白さにいかに気づいてもらえるように仕向けるか。他人には押せない自分の内部のスイッチは、そのような環境をつくってあげることしかできないのかもしれません。

カテゴリー : これからの時代の人財育成

2022 年 09 月 06 日 17:09

謝れるリーダー

 先日、ある会社の研修をさせていただいた時のことです。
 冒頭、その会社の社長がみんなに話があるということで、あることについて謝罪されました。詳しい内容は割愛しますが、社員の皆さんの前で「自分が悪かった」と謝られたのです。社員の皆さんもびっくりされていたようですが、私も、こうやって素直に自分が悪いと認め謝罪できるリーダーは本当に素晴らしいなと感じました。

 経営でもチーム運営でも、必ず結果が出ない時やうまくいかなくなる時があります。そんな状況の時に、リーダーがどういう姿勢を示すか、どんな言葉を発するか。その姿勢次第で、メンバーの気持ちが大きく変わると思います。
 以前、ある会社で、一部のスタッフのミスでお客様から大きなお叱りをいただいてしまい、そのことをきっかけに様々なところから批判を受けることになるという事態になりました。その経営者は何が悪かったかと悩み考え続けました。至った結論は、こういうことが起こる原因は、自分が外部の仕事にばかり目が向いてしまい、スタッフにちゃんと向き合う時間をつくっていなかったからだ。そう反省された経営者は、さっそくみんなを集めて「自分が悪かった。これからは外の仕事をなくし、もっとみんなとの時間をつくる」と頭を下げて謝られたそうです。ミスは自分の責任だ、きっと怒られるだろうと思っていたそのスタッフも、それの周りにいた他のスタッフも、自分に指を向けるリーダーのその姿に感動し、「悪いのは自分達だ」とみんなで、こんなクレームを出さないようにするにはどうすればいいかと話し合い、改善をしていかれたそうです。その出来事から、またその会社のお客様サービスや社員の意識がどんどん高まっていきました。

 リーダーが人のせいにしていると、部下も人のせいにする。リーダーが自分の責任だと素直に認め、誤っていくと、部下も自分に指を向ける。リーダーの姿勢通りに育っていくのかもしれません。
 しかし、多くの場合、結果が出なくなったり、うまくいかない状況になると、上司が部下を叱責し、部下が上司に謝るということが起こります。しかし、そうした状況にしてしまったのは本来リーダーの責任。この責任を受け止め、勇気をもって謝れるリーダーであるかどうか。謝れるリーダーの勇気のもとで、部下は前に進む勇気が出るのではないでしょうか。

カテゴリー : これからの時代の人財育成

2022 年 07 月 26 日 10:12

成長が実感できる環境

 若い人が成長していることを感じた時、本当にうれしくなります。以前より、頼もしくなったな、大人になったな。若い人の成長ぶりが嬉しくなるのは、私だけではないと思います。
 成長は周りの人も嬉しいですが、いちばん嬉しいのは本人に違いありません。しかし、残念なことに、職場で成長を感じられず、やる気をなくしたり、転職を考えたりする人もいます。人間は基本的に成長したいという欲求がある生き物ですから、成長を感じられないという状況は、確かに面白くないに違いありません。

 しかし、考えてみれば、人は毎日成長しているはず。お客様の話を聞く、難しい仕事に挑戦する、失敗する、成功する。恥をかく、悔しくなる。一生懸命に仕事に取り組んでいれば、自分の中の何かが、必ず成長しているはず。それなのに、成長を感じられないのは、もしかすると「成長に気づく機会がない」だけなのかもしれません。

 入社してきた新人や若い人が苦労している様子をみていると、「そういえば自分も苦労していたな」と以前の自分を思い出し、成長した自分を感じることがあります。しかし、そんな機会がなかったり、毎日追われるように仕事をしていると、自分の成長に気づけません。成長に気づくには、振り返る機会が必要です。

   120万部のベストセラー、映画「ビリギャル」のモデルになった女子高生を指導された塾講師、坪田信貴さんが、子どものやる気を高めるには、まず、大人が子供たちの小さな成長に気づくことが大事だと言われていました。「できるようになったね」「すごいね」と、子供たちの小さな変化に気づいてあげる。そして、それを伝えることで、子供たちは自信がついて伸びていくそうです。
 成長するというと、何か、大きな変化を考えがちですが、毎日、少しずつの小さな変化の積み重ねで、わずかな変化は、自分自身ではなかなか感じることができません。その変化にまわりの人が気づいて、伝えてあげれば、確かに自信がつくのでしょう。

 会社でも同じかもしれません。部下の成長に関心をもっている上司や先輩がいるかどうか。お互いが成長に関心を持ち合う職場かどうか。人間同士の関わりの中で、自分を振り返る機会が増え、成長を実感できるのかもしれません。
 人の成長にとって、環境がいちばん大事な気がします。

(株式会社ブロックス 代表 西川敬一)

カテゴリー : これからの時代の人財育成

2022 年 07 月 12 日 10:16

「場の空気」をつくるもの

 皆さんの会社でも、社内でいろいろな会議をされていると思います。
 これから先は何が起きるかわからない時代。時代に応じた新しいやり方、新しい価値を生み出していくためには、社内の会議で「いい話し合い」ができるかどうか。以前にもまして、会議のあり方が重要視されるようになっています。

 「いい話し合い」とは、参加者が全員が意見を言い、喧々諤々と建設的に意見を戦わせて、一人では思いつかないようなアイディアが生まれたりするような活気があふれる話し合いだと思いますが、日本人にはなかなか発言するのが苦手な人が多く、意見があっても言えない、遠慮するという人もいて、なかなか理想通りにはいきません。

 しかし、そんな遠慮がいらない居酒屋などでは、みんなが本音を語り、若い人も、会議で発言しない人も発言します。お酒の力もあるのでしょうが、会社の中でも、こんな話し合いができれば、会社はもっと変わっていくのだろうなと、いつも思います。

 会社の会議で発言しにくい原因は、「ここで違う意見をいうと会議が長引いて迷惑をかけてしまう」という気持ちや、「ここで発言すると自分がやらなくてはいけなくなる」「否定的なことをいうと、後で怒られる」など、過去の経験からの恐れなど心理的な背景があると言われていますが、どうすれば、みんなが「ここでは何を言っても大丈夫だ」と安心して話せるようになるのでしょうか。

 以前、社員がどんどん発言し、社員が主体的に働くことで有名な会社の経営者に、このことを伺った時、「私は、社員がどんな発言をしても表情を変えないようにしてきた」とおっしゃっていました。確かに、若い人が勇気をもって発言した時に、隣の上司や先輩が、少しでも怪訝な顔をしたり、不満そうな表情をするだけで怖くなってしまうことがあるかもしれません。そうした表情が「空気」になって、他の人にも影響を与えるのだとすれば、この経営者の言われたことは理にかなっています。

 どんな意見でも馬鹿にされない。否定されずに、ちゃんと聞いてくれる。上司の意見に対しても、おかしいと思えばおかしいと言える。
 過去があっての今なので、なかなかそう簡単に空気は変わらないかもしれませんが、上司の表情ひとつでメンバーのいいアイディアや意見が変わっていくのだとすれば、上の人たちから、自分たちがつくる「場の空気」にもっと意識的に取り組んでいくことが大切なのかもしれません。

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2022 年 07 月 05 日 09:34

自分で決定する

 リーダーの人たちから、時々「うちの部下はやる気がない」という言葉を良く聞きます。しかし、本当は部下のやる気を引き出せないのはリーダーの問題で、正しくは「私は部下のやる気を引き出せていない」ということだと思いますが、やる気の問題はいろんなところで問題になります。

 よく「やらされ感」「やらされている感」という言葉を使うことがありますが、意外と曖昧です。「本当は、自分はそうしたくないのに、人からやり方を強制されて、やりたくない・納得をしないままやっている。だからやる気がわかない」という状況でしょうか。
 自分自身を振り返ってみても、やり方を押し付けられるのはいちばん嫌です。自己決定理論という研究もあるそうですが、人は自分のことは自分で考えて、自分で決めたいという基本的な欲求があり、これを制限されるのがいちばん辛い。「つべこべ言わずに、言われた通りにやれ!」と言われると誰だって腹が立ちます。上司や経営者が「やらされ感」を感じないのは、立場上、自分で決められることが多いからかもしれません。

 しかし、組織に所属している人だと、決まりを押し付けられり、やり方を強制させられることもあります。この時に、納得もせず受け入れようとすると「やらされ感」になりますが、もし、そこで、自分自身でやる意味、やる意義を見つけ出し、「自分が納得したからやる」と言えるようにするか、あるいは、押し付けられた「やり方」をやりながらも、創意工夫しながら「自分のやり方」をやっていけば、「自分で決めた仕事、自分で考えてやる仕事」になるはずなので、欲求は満たされていくはず。やらされ感は生まれません。
でも、「自分で決定する」のは勇気もいるし、面倒です。だから、つい「言われた通りにやる道」を選んでしまうこともありますが、その道は、最初の時は気が楽でも、後々辛くなってしまいます。

 働く人はいかに「自分で決める」ということを大事にするか。リーダーはいかに「自分で決める」ことを支援するか。人間の基本的な欲求を満たしていくことが、人にとっていちばん幸せになる道かもしれません。

カテゴリー : これからの時代の人財育成

2022 年 06 月 21 日 10:02

問題・課題を見つけて解決する力

 問題と課題。よく使われている言葉ですが、若い人たちはこの違いに気づかず、自分の悩みを自分でなかなか解決できない。そんな人も多いように感じています。

 本当はこうしたいけど、うまくいかない。理想と現状のギャップが「問題」です。
その人が、「こうありたい」という理想をもって追いかけているからこそ、「問題」にぶつかるわけですから、理想を持たないようにすれば、問題は簡単になくなります。
 「自分には何も問題がない」というのは、一見良いように見えますが、それは追いかける高い理想がない状態、あるは現状維持で満足ということとも言え、もしかすると、そこが問題かもしれません。

 しかし、理想があっても、自分の「問題」がしっかりわかっていない場合もあります。
 先日、ある会社の若い社員人たちの悩みを聞く機会があったのですが、その中の一人の若者の悩みは、仕事にモチベーションがわかないという悩みでした。仕事でうまくいかないことが多く、上司からも怒られ続ける日々。仕事に自信をなくしているようでした。
何か問題は感じている。しかし、それを言葉に出来ない。だから何をすればいいかがわからない。その時は時間がなく少ししか話を聞いてあげることができなかったのですが、話すことで自分の問題が少し明確になったようで、明るくなってくれました。ばくぜんと問題を感じているだけでは、何も解決できません。
 「自分にとって何が問題か?」をまず、短い言葉で話せるようにならないと、その先には進めないのだろうと思います。

 でも、問題がわかったとしても、すぐ解決するわけではありません。次は、なぜ、この問題が起こるのか?その奥にある「本当の問題」を見つける。例えば、「仕事中に集中力がなくなり、頻繁にミスを起こす」という問題があったとする。「ミスを起こさないようにチェックリストをつくる」とやったとしても、集中力そのものが低くなっていれば、そのチェックリストすら機能しないかもしれません。なぜ、集中力がなくなってしまったのか?その奥にある問題こそが、本当の問題です。睡眠の質や寝る時間が悪くなって昼間の集中力が切れるのか。仕事の量が多くなっているのか。事実をしっかり見つめていけば、本当の問題が見つかるはず。

 その上で、どうすれば理想に近づけるかと考える。理想と現実のギャップを埋めるために「やるべきこと(What to do)」が「課題」。睡眠不足で集中力がなくなってしまうのであれば、「良い睡眠をとる」というのが課題。仕事の量が多くなっていて集中力がなくなっているとすれば、「仕事を受けない」あるいは「人に仕事を任せる」「仕事のスキルを高める」というようなことが出てきますが、この課題の中で、何がいちばんやるべきことか。状況にもよって優先順位は変わりますが、決めて実行していけば理想に近づいていくことは間違いありません。

 うまくいかない。問題も明確でない。だから課題もわからない。不安になる。イライラする。そうしたストレスに長くいると、人のせいにしたり、愚痴と不満を言ってみたり、逆に自分には能力や才能がないと諦めてやる気をなくしてしまうこともあるかもしれません。
 上司や先輩がマニュアルを作ってあげたり、細かく指示命令をしていくことも良いかもしれませんが、これから先、きっと「マニュアルにない事態」や「思い通りにならないこと」が連続でやってくるはず。
 だからこそ、その人が、自分で問題を見つけ、自分で課題を発見し、自分で解決できる力をつけてあげることが何よりも大事な気がします。

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2022 年 05 月 24 日 10:40

失敗から学ぶ

 先日、ある会社で行われた若手社員の体験発表会という勉強会に参加させていただきました。これは、新人や若手社員が、この一年間で失敗を通して学んだことを発表するのですが、自分が失敗したり、ミスしてしまった体験、そして、そこから学んだ教訓、次へどう生かしたのかなどを先輩社員の前で発表し、組織として学び合うという取り組みです。

 大きな事故につながったかもしれない、小さなミスを起こしてしまった新人は、その体験から大きく反省し、「安全」や「確認」の大切さを学び、どんな時も慎重に行動することを自分で身に付けようとしています。自分の勝手な行動で回りに迷惑をかけてしまった新人は、「落ち着いて行動すること」「相談すること」の大切さを学んで、自分の行動を変えていこうとしています。悔しい思いをしながらも、成長してきた1年が伝わってきました。確かに誰でも、失敗やミスはしたくないものですが、どんな人も最初はこうやって痛い目に会い、傷を負いながら、少しずつ成長していったはず。私も、自分の若い時を思い出しながら聞いていました。

 新人がこうやって失敗するのは、確かに知識や経験が浅いことが原因なのだと思いますが、その前に、その人が、新しいことに自ら挑戦し、「自ら行動した」という事実があります。何でも先輩に聞いて、指示通りに動けば失敗も少ないのでしょうが、それではこんな風にはならないはず。怒られて、痛い目に会って、悔しくなって、反省する。強く胸に刻まれるのは、自分から行動した時ではないでしょうか。失敗して経験をしていくことで仕事をする力が磨かれ、痛みを知って人間としても成長していく。こうやって成長してきたように思います。

   しかし、だんだん年数が経ち経験を重ねると、事前に失敗を回避することを覚えて、失敗をする経験が少なくなっていきます。それも確かに大事なことですが、こんな新人の成長体験を聞いていると、我々は成長をしていないのではないか、失敗から学ぶ機会を失ってしまっているのではないかと、反省してしまいます。
 決められたことをこなすだけの日々。確かにそれの方が、毎日が平穏に終わるのでしょうが、新人の頃のような熱い心はありません。こうやって仕事の面白さをなくしてしまうのかもしれません。

 失敗をして悔しくなり、寝れなくなる。それでまた考え、再度挑戦する。これが日々が仕事を面白くすること、成長していくことだとすれば、失敗をしない日々は、挑戦をしないということであり、成長していないこと。成長している組織というのは、もしかするとたくさん失敗をしている組織なのかもれません。

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2022 年 05 月 06 日 14:05

つまらない仕事

仕事が面白い、仕事が楽しいという状態で働きたい。
誰もが本当はそう働きたいと願っているのに、仕事は楽しくない、つまらないと感じて日々を過ごしている人は意外と多いのかもしれません。

ミスをするとお客様に怒られる、上司に怒られる。
だから、言われたことだけやって、仕事をそつなくこなそう。
そうして、機械的に仕事をしているうちに、自分で考えることがなくなり、仕事が面白くなくなっていく。
最後は自分の仕事は、「なんてつまらない仕事だ」と思ってしまう。

確かにお客様に怒られたり、上司に怒られたりすることは嫌なことですが、それが面白くないことの要因ではなく、本当はその後の仕事の仕方が、仕事を面白くなくしているような気がします。
「仕事をつまらなくする方法」はいろいろあると思いますが、一番大きなポイントは「自分で考える」のをやめることではないでしょうか?例えば、モノを右から左へと運ぶという単純そうに見える仕事を、言われた通り、言われた方法でやり続ける。ロボットのように働くとつまらない。

しかし、同じ仕事でも、運ぶ時間を測定し、どうすればもっとスピードアップできるか?どうすれば、もっと綺麗に並べることができるか?と考えていけば、モノを運ぶということでも面白くなっていきます。ただ、これも「運ぶ時間を測定してやりなさい」「早く綺麗に積む方法はこうだ」とやり方を教えてもらうと、確かに成果は出そうですが、きっと仕事は面白くなくなります。初めてのゲームをやるときに、最初から攻略法を教えてもらうような感じかもしれません。

仕事を楽しくする人は、考えていく癖があると思います。運び方だけでなく、そもそも「なぜこの仕事をするのか?」「運ばなくても目的を達成する方法はないか?」「他の手段で運べないか?」と考え続けていくから面白い。仕事をつまらなくしたいなら、考えないことがいちばんだと思います。

面白い仕事と面白くない仕事があるわけではなく、仕事は仕事。
仕事をつまらなくするか、面白くするか?その人の問題でもあり、仕事をつまらなくさせてしまう職場の環境の問題でもあるかもしれません。

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2022 年 04 月 05 日 11:41

仕事のやりがいと厳しさ

 新入社員が会社に入ってくる季節になりました。
 昨年このコロナ禍で入社してきた新人たちは、当初、なかなか思うように教育ができないという不安もありましたが、アンケート調査などによると、逆に「時間をかけて仕事を覚えることができた。」など、ゆっくりと成長できたというメリットを感じたという声も多く、コロナ禍のこの状況が一概に悪いということでもなかったようです。

 せっかく入社してくれた新入社員には活躍する人材になってほしい。誰もがそんな気持ちを持って迎える訳ですが、そんな思いと裏腹に、今、若手の離職率が増加しているようです。
 先日、ネットのニュース※で、「ゆるい職場と若手の離職」が話題になっていました。リクルート社の調査では、労働時間が短くなって、会社で叱られることも少なくなっているにも関わらず、若手は逆にそれが不安になり、辞めていく人が増えているそうです。
 その不安とは「会社には満足しているが、このままで自分は成長できるのか?」というものだそうです。学生時代にバイトや社会活動で体験を積んだ人ほど、「ゆるい職場」にいることが不安になる。つまり、やりがいを感じることができない職場に不安を感じているのかもしれません。
※https://news.yahoo.co.jp/articles/e9b999e24a0f485607daa39d7b661213e2c199c4

 経験を積んだ人なら誰でもわかると思いますが、仕事のやりがいは、厳しさを乗り越えていく中で生まれてくるものです。
 そのプロセスは本当に大変だったけど、やり遂げたときに何とも言えぬ達成感を覚えた。
 長い苦労を乗り越えて、振り返ると成長している自分を感じた。
 その時はつらかったけど、厳しく言ってくれた先輩のおかげで、自分は成長できたことにあとで気づく。
 「あなたがいちばんやりがいを感じたことは?」と質問すると、ほとんどの方が「苦労の体験、それを乗り越えた体験」を語られますが、やはり「やりがいのある仕事」には「厳しさ」が不可欠なのではないでしょうか。

 しかし、最近はなかなか厳しく指導できない雰囲気があり、上司も思い切って叱ることもできません。それが良いと思ってきたことが、かえって若手のやる気をなくしてしまう結果になっているのは本当に残念です。人を人間扱いしないブラック企業はもちろんダメですが、ゆるいホワイト企業でも人は育たない。「いい会社」は、決して「仕事にぬるい会社」ではないはずだと思います。「働きやすい職場」と「働きがいのある職場」は違う概念です。もちろん「働きやすい職場」が良いに決まっていますが、働く人が真に求めているのは「やりがい」「働きがい」ではないでしょうか。

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私たちが大切にしていること