2024 年 06 月 25 日 10:02
お店の姿勢
私たち消費者は、お店を選ぶ時、便利だから、品揃えがいいから、接客がいいからというような理由で選んでいると思いますが、その理由の奥に、やはり、そのお店や企業の商売に対する姿勢も判断の軸になっているような気がします。旅行で利用するお店や、1回だけしか利用しないお店なら、それほど問題にしないかもしれませんが、通い続けているようなお店は、結局、その店の姿勢が好きという理由でファンになっているのではないでしょうか。
お店の姿勢というのは普段は見えないものですが、小さなところ、ちょっとした行動に滲み出てくるような気がします。先日、あるスーパーの方に、お客様と店員さんの小さなエピソードを伺いました。その日、閉店の準備が進み、まな板や包丁などを消毒して片付けをしていた時に、一人のお客様がキャベツをほしいと言ってこられたそうです。それも4分の1だけ。その時に店員さんは、喜んで!と笑顔で片づけたまな板や包丁を出して売ってあげたそうです。面倒な時間に申し訳ないとお客様も思っておられたはず。その時に嫌な顔ひとつせず対応してくれるお店の姿勢は嬉しかったに違いありません。
こうした対応はその人だけの特別なものではでないはず。普段から、こうしたことを大事にしようという店長がいて、快く手助けしてくれる仲間がいる。会社そのものが業績よりもお客様を大事にしようという姿勢があったからこそできた対応のような気がします。
お店の姿勢とは、企業の「あり方」、企業の理念。お客様を大事にするという姿勢、喜んでほしいという企業のあり方が「店の姿勢」として消費者に伝わっていく。4分の1のキャベツのように、お店の「あり方」が、売り場に、接客に、商品の細部ににじみ出て、そこに共感したお客様がファンになり、通い続けるようになる。
閉店間際に来店して、ムスッとした顔をされる店員さんもいますが、そうした対応も含めて、消費者は、いつもお店の「あり方」も敏感に感じているような気がします。
消費者がお店の「あり方」もお店選びの判断にしているとすれば、企業がもっと理念を大事にし、理念の浸透に多くの時間を割いていくことが、持続的に成長していくためにも大事な気がします。
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いきいき働くための仕事の姿勢 これからの時代の経営のあり方
2024 年 03 月 27 日 09:43
お客様が本当にほしいものは
先日、ある仕事で地方の化粧品専門店のお店を見学していた時に、一人の高齢の女性がお店に来店され、化粧品を買って帰られました。高齢の方も美に対する気持ちは若い人と一緒なんだと思い、対応された販売スタッフの方にお伺いすると、その方は92歳。初めて来店される新規のお客様でした。買われた化粧品は、そのメーカーが50年前に発売したブランドでしたが20年前に販売が終了。昨年復活したブランドでした。自分が若い時に使っていた化粧品が復活したことを知り、懐かしくなって買いに来られたそうです。
地方都市は人口減少や高齢化が進む時代。小売業の存続が難しくなってくると言われていますが、高齢化の時代でも、お客様にしっかりと価値が伝わりさえすれば、まだまだ売れていくのかもしれない。そんなことを考えていました。
「ドリルを買う人がほしいのは穴である」。これは1968年に出版された「マーケティング発想法」(セオドア・レビッド教授)の中に出てくる言葉ですが、マーケティングの世界では昔から有名な言葉です。ドリルを買う人は、ドリルという製品そのものでなく、その製品によってもたらされる結果、つまり「価値」がほしい。だから物を売るのではなく、それがどのような価値を提供するのか、その価値を提供することが大事だという話です。
ドリルではなく、ほしいのは穴。この、ご高齢者でいえば、欲しかったのは化粧品ではなく、いきいきと張りのある幸せな暮らし。ファミリーレストランでいえば、食事を食べに来られているのではなく、本当にほしいのは家族との幸せな時間。消費者は、物そのものでなく、物からもたらされる価値(幸せ)がほしいのだと、いうことだと思います。
しかし、売る側が「物」を売っていると考えていると、つい「ドリル」の方を紹介しようとしてしまう。いかに新しい機能があるか、どれくらいのパワーがあるか。そこに消費者とのギャップが生まれる。本当に欲しいのは「穴」ならば、提案すべきはその製品を使ってどのような幸せが得られるかといことであり、売るだけでなく、穴をあける作業の相談に乗ったり、穴をあけた先にある「お困りごと」に応えていくサービスを提供していけば、さらに喜ばれるのかもしれません。
少子高齢化で物が売れないという声をよく聞きますが、そういう時代になれば、地域で暮らす人も困ることが増えていく。逆に新たな困りごと=新しい「穴」も増えていくとも考えられます。「穴」、お客様が本当にほしいものに目を向けていくことが大事になっているのかもしれません。
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これからの時代の経営のあり方
2023 年 12 月 12 日 10:20
いい会社とは?
学生は「いい会社に入りたい」と言います。
我々も「いい会社だ」とか、「いい会社になろう」とか「いい」という言葉を使います。しかし、そもそも「いい会社」とはどのような会社なのでしょうか?
そもそも「いい」という定義は人によって様々。時代によっても変わります。しかし、「いい会社」というのが、我々がこれから向かう方向性だとしたら、「いい会社」のイメージが明確になっていなければ始まりません。
昭和の頃、有名企業に就職できると、周りから「いい会社に入ったね」と言われました。知名度があり、大企業が「いい会社」という時代もありました。しかし、無名であっても、価値ある製品を世に届けている会社もあります。また町の中にも根強いファンに支えられ「いい店だ」と愛され続けるお店もあります。もはや、全国的な知名度だけが「いい会社」ではなさそうです。
また、「成長したり、拡大している企業は将来性がある」とマスコミが騒ぎ、「急成長がいい」と思われた時期もありました。しかし、今日成長しているからといっても、そこで働く人が幸せだとは限りません。働く幸せもいい会社の必須条件になってきています。また、例えばお客様に安く商品を提供し喜ばれる会社でも、もしも、その裏で取引先に無理を言って叩いているようなことがあれば「いい会社」とは言えません。
「いい会社」をイメージするのは確かに難しいのかもしれません。ただ、今の世の中、「自分だけよければ、お金さえ儲かれば、今だけよければ」というような利己的な企業姿勢は、確かに嫌われているようにも見えます。
「いい」というのは、自分が「いい」というのではなく、関わるすべての人から「いい」と言われること。
昔の近江商人も「売り手よし、買い手よし、世間よし」ということを大事にしていたそうです。そう考えると「いい会社」とは、すべての人の幸せをめざす経営姿勢そのもの。そう考えると「いい会社」とは、業績や規模などではなく、その姿勢を持ち続ける会社だと言えます。
皆さんにとって「いい会社」は、どのような会社ですか?
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これからの時代の経営のあり方
2023 年 08 月 18 日 15:55
待つことの大切さ
「はじめてのおつかい」というテレビ番組がありますが、子供たちがはじめての体験を通して成長する姿にいつも感動してみています。はじめての体験で成長するのは、勇気をもって挑戦する子どもたちだけでなく、その場をつくるために手助けしたい気持ちを、ぐっと我慢する親も成長する体験かもしれません。失敗を繰り返す子どもを、親が待ってあげるから子どもが成長する。「待つ」という姿勢が、人の成長にとっていちばん大事なことじゃないかと、この番組を見ながらいつも思います。
しかし、会社になると、なかなかこの「待つ」ということができないことがあります。自分自身、いろんな失敗を重ねる中で技術など様々なことを身に付けてきたはずなのに、いざ人を教える立場になると、できない人に対して、つい「なぜ出来ないのか」と叱責したり、手助けしてしまったり、自分自身が待ってもらって成長したことを忘れてしまうことがあります。
諦めないこと、助け合うこと、最後までやり抜くこと。はじめての体験を通して、子どもたちは人として大切なことを身に付けていきます。体験を通して成長するということは会社も同じかもしれません。はじめて部下を育てる。はじめてリーダーになる。はじめて難しいプロジェクトを推進する。振り返れば、必要な技術や知識は、すべて体験を通して身に付けてきたことばかり。人の成長には体験が欠かせないのだと思います。
「会社は人間成長のための舞台である」という経営者がおられましたが、どれだけ良い体験を積ませてあげられるか。そのためにも「待つ」ということがいちばん大事なのかもしれません。
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これからの時代の経営のあり方
2023 年 04 月 25 日 10:33
仕事の目的
何のために仕事をするのか。目的意識をもって仕事をすることが大事だと、私も若いころから言われていました。目的を意識してやる仕事と、していない仕事では質が違う。仕事をこなすな。目的を意識して、目的にこだわって、創意工夫しながらやるのが仕事だ。若い時に何度も言われて育ってきました。
このようなことを言われるのは、私たちはつい、目的を忘れがちになってしまうからなのかもしれません。
目的は「未来」のこと。こうありたい、こうしたいと考えることです。それが「今」の仕事の処理にばかりに目がいくと、現在のことであたまがいっぱいになる。期日に間に合わせる、言われたことを処理する。処理することで頭がいっぱいになっている時は、未来はありません。
例えば、経営理念に、私たちの目的は顧客に満足していただくこと、お客様に喜んでいただくこと、と書かれている。しかし、今の業務を処理することで頭がいっぱいになると、それをこなすことでいっぱいになって、この大事な本来の目的をつい忘れがちになります。お客様のことを考えなくなる。相手のためにプラスαの行動をしようとも思わない。よく理念が形骸化するということが言われていますが、このように、つい現在ばかり思考が向いてしまい、未来への想いを忘れてしまうことかもれません。
ただ、働く人にとっては「今の仕事」が大事なのは言うまでもありません。だからこそ、余計に普段から強く目的を意識しないといけないのかもしれません。朝礼などで理念を唱和したり、クレドを確認するのは、そんな意味があると思います。
この仕事は何のためにやるのか。
目的を意識し、重視し、その目的にこだわり続けることを「目的思考」と言うそうですが、言われたことを言われた通りにやっていればいい時代が終わり、自分で考えていくことが求めてられていく時代には、こんな思考がますます大事になっていくように思います。
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これからの時代の経営のあり方
2023 年 03 月 07 日 11:57
お客様の声
お客様の声に耳を傾けて商売をする。これは昔から言われ続けていることですが、「お客様の本音が聞けているか」と言われると、なかなか難しいことかもしれません。
そもそも我々はお店で嫌な体験をしたとしても、わざわざお店に苦情を言うということはせず、「黙って去る」「そこで利用しなくなる」のが一般的です。
いわゆるサイレントカスタマーというお客様です。統計によると、企業の対応で不満があった場合に「企業に対する申し出率」は27.5%。7割の人が不満をもったまま家に帰っているということになります。この人達は、不満が解決されていないので、その企業を利用しなくなる確率が高い。大切な既存顧客を失ってしまいます。それだけならまだしも、最近はその不満をSNSで「不満」を発信して広げてしまうこともあり、ほっておくと企業イメージが悪くなってしまいます。
最近、こんな体験をしました。
いつも利用しているお店に予約の電話をしたのですが、いつもならお店の人が出てくれるのですが、その日は音声ガイダンスに変わっていました。ガイダンスに従って予約をしていったのですが、本当に時間がかかり、途中であきらめてしまいした。人手不足の時代なのでしょうがないとはいえ、以前なら数分で終わっていた予約がこんなにも手間がかかるのかと、不満を感じました。しかし、この不満をお店に伝えようにも、お店にかけても出るのはガイダンスの音声。私の希望は伝わりません。その予約はせず、私は他のお店に行きました。この不満をあえて伝えるかというと、聞かれる機会があれば言いますが、あえてわざわざ言いにいくようなことはしないと思います。
最近は、お客様が気軽に連絡できるように相談窓口を設けるなど、申し出しやすいようにされている企業も多くなっていますが、実際のところ「不満だが、苦情をいうほどのことではない」「そこまでやるエネルギーを使いたくない」というのがほとんどではないでしょうか。
ただ、既存客が一人減ったのは事実。少子高齢化でどんどん顧客が少なくなっていく時代に、大切な顧客を失うことは大きなダメージです。
顧客満足度の高いある会社は、こうしたお客様を少しでもなくしていくために、社内に「クレームは宝」と打ち出し、不満を伝えてくださるお客様を大事にしようと、苦情と向き合い、ひとつひとつを真摯に解決していくことを大事にされていました。顧客が少なくなる時代には、「わざわざ苦情・苦言を言ってくださる顧客」というのは、本当に大切なことを教えてくださる企業の先生のような存在かもしれません。
ある調査によると、様々な技術革新で買い物の仕方や商品そのものは、大きく変化してきていますが、お客様の心理は、昔からそんなに大きく変わっていないそうです。
「繁盛したければ、お客様の声を聴け」という言葉が改めて心に響きます。
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これからの時代の経営のあり方
2023 年 03 月 01 日 12:47
AIと人間のホスピタリティ
話題のAI、ChatGPTは、様々な質問に答えてくれるだけでなく、文章の作成から、要約、校正、小説や詩の制作までやってくれるAIですが、その正確性や使い方など、まだまだ課題があるとはいえ、これまで時間がかかっていた作業をこうしたAIが代行してくれると、仕事もより効率的になっていくはずです。こうしたメルマガなどもいつかChatGPTが書いてくれる時がくるかもしれません。
外食産業ではタブレット注文があたり前になり、セルフレジのお店はもちろん、今後はレジすらいらないお店が出てくると言われていますが、人口減少による労働力不足の時代には、AIやロボットは不可欠な存在になっていくのでしょう。こうした時代の中で人間の仕事はどのようなものになっていくのでしょうか。
以前、臨機応変な対応、お客様の心に寄り添う対応など、「ホスピタリティ」(おもてなし)は人間にしかできないと言われていましたが、24時間どんな時でも質問に答えてくれたり、機嫌に左右されず、いつも安定して対応してくれるAIは、確かに臨機応変さや気配りは劣っているとはいえ、ある面、人間よりホスピタリティや顧客満足を提供できているとも言えます。
ロボットも以前は無機質なものという感じがしていましたが、表情を変えたり、会話をするロボットと接していると愛嬌を感じることもあり、ロボットが人を癒すということも生まれています。
ホスピタリティの分野まで機械やAIが活躍していくと人の仕事が奪われると心配になりますが、まだ、お客様の雰囲気や表情から気持ちを察知したり、その状況に応じて最善の対応を考えるということは機械にはできないと言われていますし、ロボットやAIがお客様との人間関係を築けるとは思えません。人間らしい気配りや人間力が、今以上に人に求められていくのだと思います。AIやロボットの対応は確かに便利で、良いことがたくさんありますが、お客様との絆をつくる顧客サービスの世界は、いつまでも人が中心になりそうですし、そうあってほしいなと思います。
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これからの時代の経営のあり方
2022 年 09 月 27 日 11:46
見えない資産
経理の帳簿には今月の売上高はいくらであると、数字一行で表されますが、その売上高は、ひとつひとつのお客様の代金であり、見えませんが、そこにお客様の気持ちがあります。
その日たまたま買いに来られたお客様もいれば、遠くから車を飛ばしてわざわざこのお店に買いに来てくださった方もいて、お客様のいろんな思いの上に「売上」という数字が出来ています。
もちろん、どのお客様もありがたいお客様であるのは間違いありませんが、このコロナ禍で、改めて自社を愛し、利用し続けてくださる「常連客」の大切さを感じている方も多いと思います。
「この会社の人たちが好き」「この店でなければ」「この会社の姿勢が好き」と贔屓にして通い続けてくれる。顧客の比率にすれば数割かもしれませんが、そういうお客様は何年、何十年と通い続けてくださっている訳で、自社を支えてくださる本当にありがたい存在です。数字で表される「売上」「利益」も資産ですが、こんなお客様のお気持ちこそ、会社の「見えない資産」だと思います。
他にも企業には見えない資産があります。それが働く人達の「やる気」という資産。働く人達がこの会社のために頑張ろうと支えてくれる思いがあって苦しい時も乗り超えられる。この会社が好きだから、この仕事が好きだからという思いも、目に見えませんが、大事な資産です。そして、仕入れ先の人たちの気持ちも見えない資産。
仕入れ先の人たちの誠実さ、お客様の信頼、働く人のやる気。どれも損益計算書や貸借対照表に出てきません。でも、いずれもなくなってしまうと明らかに会社は衰退していきます。大切なものほど見えないと言いますが、このコロナ禍で「見えないもの」の大切さに気付くことが多くなりました。
見えないものをみる。見えないからこそ、あえて心をそこに向けていくことが大事な気がします。
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これからの時代の経営のあり方
2022 年 04 月 19 日 10:42
AIのおもてなしVS人間のおもてなし
先日宿泊したホテルの部屋に、お客様のお困りごとにAIが対応するサービスが設置されていました。チェックアウトの時間はいつか?いちばん近いコンビニエンスストアは?など、お客様の問い合わせに対してAIが回答するものです。このデータが蓄積されるとお客様サービスの改善の手がかりにもなるでしょうし、人手不足の時代に、いちいち人が動かなくてもよくなります。多言語対応も用意されているので、フロントの方も安心かもしれません。きっと、どの業界でも、このようにAIが人間の仕事を肩代わりしてくれるようになっていくのでしょう。
ただ、AIには苦手なこともあります。AIは人間のような気遣いができません。
例えば、人間であれば寒い外を歩いてチェックインされた方をみると、「ああ、大変だっただろうか、さぞ、寒かっただろうな」と共感し、声をかけたり、毛布を渡したりすることができますが、残念ながらAIには感じる心がありません。もしかすると、外気温のデータ、客の服装、体温データ、顔色データなどを蓄積していけば、計算をして、「寒い中、起こしいただきありがとうございます」という言葉はかけられるようになるかもしれませんが、「熱いお茶を入れてあげよう」とか「部屋を暖かくしてあげよう」とか、想像力を発揮して対応するというのは、さらに難しくなるはず。人の気持ちは、その時、その場、その状況で全く違う。人間同士だからこそ、気持ちや心を感じることができるのだろうと思います。
また、人間は便利さだけを求めていません。例えば、外国の旅行客は、流暢に母国語を話してくれるスタッフがいると安心するのも事実ですが、日本語しか話せないスタッフが身振り手振りで一生懸命に対応してくれる方が、外国に旅行に来たという醍醐味が味わえて面白いという人もいるそうです。
最近はチェックイン、チェックアウトの自動化が進んでいますが、先ほどの寒さの中でも暖かいおもてなしがされるなら、手間がかかっても人間が対応してくれる方が、旅の疲れが癒されるという思う人もいるでしょう。
便利さも求めるし、人間らしいおもてなしも求める。人間の心は複雑です。
ただ、AIが人間の心を癒すことができないかということ、実はそうではないそうです。例えば、一人暮らしのお年寄りがAIロボットに話しかけ、ロボットが応えると、それで幸福度は上がっていくそうです。掃除ロボットが人間のように自動的に動いているものをみると、何となく可愛く感じるのも同じかもしれません。AIにもおもてなしはできるのです。
逆に、人間が人間の対応をしているのに、心が癒やされない「おもてなし」もあります。
知り合いの幸福学の先生とお話をしていた時に、人間が一番ストレスを感じるのは、ロボット化した人間の対応だと言われていました。人間なのに、「マニュアルなのでできません」と答えたり、マニュアル通りの対応しかしない。そんな時に、人間は「そんなことなら、むしろAIの方がいい。相手はロボットだと割り切れるから、イライラしなくてすむ」と感じるそうです。確かに、人間らしさを忘れた人間ほど、怖い存在はありません。
AI対人間。おもてなしの世界で、人間は何をしていけばいいのでしょうか?
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これからの時代の経営のあり方
2022 年 03 月 29 日 11:48
お客様の心の声を聴く
「お客様の声を聴く」ことの大切さはどの会社でも認識されていると思いますが、お客様の生の声を実際に聞くという取り組みをされているところは意外と少ないのかもしれません。
先日、ある会社の研修の一環として「お客様の生の声を聴く」という取り組みをしていただきました。常連のお客様に時間をいただき、今後の参考のためにといろいろなことを聞かせていただくという取り組みです。
「当社を長く利用していただいていますが、その理由は何ですか?」
「当社のどのようなところを良いと思っていただいていますか?」
「もし、改善するとすれば、どんなことを変えてほしいと思われていますか?」
普段いろいろとお話をしているお客様ですが、お気持ちの深い部分まで聞かせていただくことはあまりありません。
「お客様はこんなところを評価してくださっているのか」「こんな風に思ってくださっているのか」
研修会の宿題として、お客様のヒアリングしたお店の人たちは、お客様がなぜ他店ではなく自分たちの店を選んでくださるのかその理由がわかり、とても感動されていました。
お客様の心の声には、改善のヒントもありました。
そのお店ではお客様が駐車場に入ってこられると、スタッフが駆け寄り、ドアの前でお待ちするというアクションをされているのですが、あるお客様が「確かにうれしいんだけど、何かせかさせている気がする」ということをおっしゃったそうです。善かれと思ってやっていることが、実は相手にとっては小さな負担になっていることもある。だったら、少し離れてお待ちするようにしよう。そんな気づきもありました。
お客様は嫌なことがあっても、なかなか店に伝えることはされません。本当に嫌なら店を変えるだけ。小さな不満は心にしまって、小さな我慢をしているのかもしれません。しかし、こうやってお店の方から聞いてもらえると、その不満が出てくる。お店のことが好きだからこそ、気になったことを教えてくれる。真実はお客様にある。
喜びの声、ご不満の声、ご期待の声・・・。
お客様の生の声、心の声はスタッフのモチベーションも高めます。そのうえに、たくさんの改善点、やるべきことも見つかります。形式的なアンケートでは出てこない「心の声」を聴くことがますます大事な時代だと思います。
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これからの時代の経営のあり方
2022 年 02 月 08 日 17:56
「いらっしゃいませ」に変わる言葉とは?
先日、ある老舗の小売業で働くある友人が、Facebookで「お客様に声をかける時に、“いらっしゃいませ”という言わない接客を考えていた」と書いておられました。「いらっしゃいませ!」というと、お客様と自分の間に境界線を引いてしまうような気がしてしまう。もっと良い挨拶や言葉はないかと、売り場の皆さんと話し合われたそうです。この投稿に限らず、この「いらっしゃいませ」の言葉の非是は、いろいろと話題になっているようです。
確かに、昔から、小売業では「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」「かしこまりました」「恐れ入ります」「お待たせいたしました」などの大事な言葉を、接客8大用語として毎朝唱和をしたり、新人教育の中で教えています。どれも、商売をしていく上で大事な言葉ですし、しっかり徹底されているお店は、マナーも良いし、お客様の評価も高いと私も感じます。ただ、先ほどもご紹介したように、今、小売業で働く人の中には、これらの定番言葉に、違和感を覚える人もいます。昔は商人は客より一歩引いて、客を立てるという慣習がありました。しかし、お客様の数が少なくなり、ますますファンづくりが大事になっているこの時代、顧客との関係も変わっているはず。「接客用語」はこのままでいいのでしょうか。
私自身は、初めて入るお店で「いらっしゃいませ」と言われても、今はあまり違和感はありません。しかし、業種にもよりますが、何度も通っている店で、店員さんの名前もわかり、親しくさせてもらっているお店では、もしかすると、「いらっしゃいませ」ではない方が心地よいかもしれません。「〇〇さん、お久しぶりです。」「お元気でしたか?」という声がけのほうが、こちらも安心しますし、印象に残りそうです。
帰りの挨拶も、「ありがとうございました。」が定番ですが、親しい関係では少しよそよそしい感じもします。美容室など、行きつけのお店では、「気をつけてお帰りくださいね。」「お仕事頑張ってください」「いってらっしゃい」などと声をかけてもらえますが、その方が自然な気がします。
お店の業種やサービスの形態にもよるでしょうし、お客様との関係性によって変わるのかもしれませんが、確かにいつまでも「いらっしゃいませ」では、境界線は消えないのかもしれません。
ネットで何でも買える時代になってくると、きっとこれからは、もっとお客様と販売員さんの心の距離が近く、と売り手・買い手の関係を超えて、気軽に何でも相談できる人が求められていくように思います。お客様にどう声をかけていくかを考えるということは、お客様とどんな関係を築こうとしているのかということかもしれませんね。
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これからの時代の経営のあり方