2026 年 03 月 04 日 10:35
満足を超える瞬間
顧客が少なくなる時代になって改めて顧客の再来店、リピートが重要だと言われていますが、どうすればそれを実現できるかは明確にはなっていません。以前、顧客満足に関するある調査資料を見たときに、改めて考えることがありました。それは飲食店を利用し、お店を出てこられたお客様にまず「もう一度この店をリピートしたいと思いますか」と聞き、次に「リピートしない」と答えた方に「その理由」を聞くという調査でした。飲食店ですから、料理がおいしくなかったとか、サービスが悪かった、あるいはトイレが汚かったからというような答えが上位に来ると思っていたのですが、意外なことに第1位は「特に理由はない」という答えでした。
確かに料理はおいしい、サービスもよい。全体として満足はしている。しかし、もう一度行きたいかと聞かれると、そう答えられないことがあります。今や美味しい料理や良いサービスはどこでも体験できる時代。その店や企業で「行きたくなる理由」が生まれないともう一度ということにならないのかもしれません。
わざわざ行きたくなる、もう一度利用したくなる。以前、ある飲食店で食事をした時、一年以上も前に来店した私の名前や好みを覚えていてくれて、私に合わせた食事を出してくれたことがあります。小さなお店でしたが、そのオーナーの気遣いに感動し、それ以来出張の度に利用しています。1回しか来ないかもしれない、私の記録をとっていてくれたのだと思います。
また、これは道路などの工事を請け負う会社で聞いたことですが、業界のほとんどの会社が効率を重視するため、発注された仕様書通りに仕事をする状況にありながら、その会社は工事を進めていて、仕様書以上に良いやり方があるとわかれば、時間や手間がかかっても担当者が工事を止め、自ら変更を申し出て工事を進めていく。発注側は気づかなかったことを気づいてくれたことや、後々のために手間暇かけてやってくれることに感動され、その後もずっとその会社に声をかけるようになっているそうです。これは2つの事例ですが、お客様が通い続けたくなるきっかけは、こちらの期待を超えた時。その企業の「何か」に感動した時なのかもしれません。
しかし、いくら「感動」を提供することが大事だと言われても、それを提供するのは難しい。数多くのお客さんの名前や好みを覚えるのはかなり面倒なこと。工事を止めると手間も時間もお金もかかります。リピートを増やし業績を伸ばそうというような自分都合の思いでスタートしたとしても、すぐに成果がでる訳でもないことは継続はしないはず。自分の仕事で役立ちたい、喜んでほしいと思う強い思いや気持ちがあるからこそ、できることだと思います。そう考えると、最後は企業の姿勢であり、そこで働く人の姿勢。お客様の心に伝わっていくのは、満足させる仕組みではなく、純粋な企業の思い、理念なのかもしれません。
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お客様満足・感動の向上
2026 年 02 月 16 日 16:59
「やらされる仕事」から「やりたい仕事」へ
先日、自分の仕事に誇りを感じ、毎日楽しく仕事をしているという若い人に会いました。営業職でもノルマが辛い、しんどいという人も多いそうですが、その人はお客様に役立つことが嬉しい、達成感を感じるなど、自分の仕事の楽しさを話してくれました。
同じ仕事に就いていたとしても、人によって内側の気持ちや思いは違います。この若者のように楽しさややりがいを感じて一生懸命に働いている人もいれば、本当はやりたくないけれど、お金になるならと頑張って働いている人もいます。その人にとってその仕事が「やりたい仕事」か「やらされている仕事」か。感じ方ひとつで仕事の景色も、そこから生まれる成果も大きく変わります。
好き、面白い、楽しいなど、自分の内側から生まれる動機で行動することを、心理学で内発的動機付けといい、お金のため、怒らないため、評価に影響するなど、自分の外側に行動の動機があることを外発的動機付けというそうですが、内発的な動機で働くことは、仕事時間が楽しい時間になり、その人にとっても、いいことであるはずなのに、「やらされている」と感じて働く人は少なくありません。どうすれば、「やらされる仕事」が「やりたい仕事」になっていくのでしょうか。
子どもの習い事や勉強でも、親が無理やりやらせることで、次第に面白さに気付く子どももいれば、無理やりやらされ、習い事や勉強が嫌いになる子どももいます。最初はやりがいを感じていない仕事でも、お客様が喜んでくれたり、仲間が喜んでくれたひとつの体験で改めて、自分の仕事の意義を感じ、心に火が付くこともあります。あるいは、任された仕事で大きな失敗をしてしまい、悔しくなってやる気になる人もいれば、その失敗が怖くなって、嫌いになってしまう人もいる。そもそも好きになるかどうかはその人の問題。「好きになれ」と言っても好きになってくれる訳はなく、やはり最後は一人ひとりにやりたいこと聞いたり、その人に合わせていかないと、好きになってもらうことなどできないはず。
昔はやる気を与えるためにインセンティブを与えたり、恐怖で管理するなど、外発的動機付け全盛の時代がありました。恐怖で脅せば確かに頑張る気持ちは高まる。ニンジンをぶらさげればやる気になる。でも、それがずっと続けば、働く人は結果や人のことばかりを気にするようになります。いつの間にか本当の仕事の楽しさ、役立つ喜びや工夫する喜びなどに目が向かなくなってしまう。管理のやりすぎが本来持っていた「楽しさ・面白さ」を消してしまうのかもしれません。内発を動かすことは難しいし、正解もない。だから、つい、今もお金や罰で人を動かすという簡単な方法を選んでしまうのかもしれません。
自分の中の心の火で動いている人は、指示されなくても仕事をする。見られていなくても手を抜かない。面白さを自分で勉強する。自分で意味を見出し、自分で改善する。楽しい人にしか、本当にいい仕事はできないように思います。
「やらされる仕事」ではなく、「やりたい仕事」をする組織。創造性を発揮して新しい挑戦が大事になっていく時代。そんな組織をつくっていくことが大事になってきているのかもしれません。
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いきいき働くための仕事の姿勢
2026 年 02 月 04 日 10:53
働きがいのある会社が成長する
先週の日曜日、ホワイト企業大賞の表彰式が東京で行われました。
このホワイト企業大賞は、働く社員の幸せと働きがいを、さらに社会貢献を大切にしている企業を表彰し、その輪を広げていこうという目的でスタートした組織です。思いに賛同した様々な人によって運営されていて、私も企画委員の一人として参加しています。今年で12回目、今回も多くの企業がエントリーされ、様々な賞を受賞されました。
今、世の中では、ホワイト企業というと福利厚生が充実している企業、休みが多い企業というイメージがあるのかもしれません。しかし、このホワイト企業大賞では、それはひとつの大切な要件であるものの、いちばん大切なことではない。いちばん大切なことは、働く人が仕事に誇りややりがいを感じて働けていること、そこで働く仲間同士が良い関係で働けるなど、働く人が幸せであることがいちばん大事な要件だととらえ、表彰をしています。12年目も続けていると、少しずつそうした方向性に共感する企業が増え、今年も例年以上の応募がありました。
「働く幸せ」とはどんなことでしょうか?何かを成し遂げたことの達成感、お客様や社会に役立つ仕事ができていることへの誇り、仕事を通して自分が成長できることへの喜び、自分らしく自分で決め自分で行動できる喜び、認められ感謝されること、いい仲間と働けている実感も、働く幸せです。こうした目に見えない喜びが数多くある職場を「働きがいのある職場」というのかもしれません。
働きがいを感じる社員が多くいる会社は、当然社員の人たちの意欲も高い。互いに協力し、仕事に前向きに取り組むからこそ、結果として会社の業績もあがり続ける。受賞された企業の報告でも、社員の幸せに目を向けるようになって業績もあがるようになったという企業がたくさんありました。
今までは、目に見えやすい業績や規模という指標を追いかけることが世の中の常識だったのかもしれません。しかし、こうして様々な業界で社員の幸せというような目に見えにくいことをいちばん大切な価値として経営する企業が増えている姿をみていると、この方向性は間違っていないように思います。
ただ、数字で表れにくい「目に見えない価値」を追求することは、最初は手探りのようなものなのかもしれません。理想論に見えたり、遠回りのように見える人もいるのでしょう。まだ、世の中全体がこの方向性に向かっている訳ではないのだと思いますが、働く時間だけなく、本当に自分らしく、やりがいのある仕事をしたいという人も増えている中で、企業の形も少しずつ変わりだしているのかもしれません。
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働きがい・やりがいの向上 素晴らしい組織風土づくり
2026 年 01 月 19 日 17:54
仕事を丁寧にするという競争力
ビジネスの現場では、よく、もっとスピードをもって効率をあげようという言葉が飛び交います。確かに時間あたりにどれだけ成果を出すかという指標は大事です。しかし、足りていないのはスピードなのでしょうか。本当に成果が生まれる、うまくいっているプロジェクトや成果があがり続けている組織を見ていると、スピードを上げる以上に、仕事を丁寧にしようということに力を入れているような気がします。
丁寧な仕事というのは、単に時間をかけることでも、慎重になりすぎることでもないはず。丁寧さとは、この仕事を届ける相手や結果を想像しながら仕事をすることだと思います。例えば資料をつくる時でも、この一行が相手にどう伝わるか。この言葉は、誤解を生まないか。この一手間で、次の人は楽になるか。相手を考え丁寧にする仕事は、自然と無駄が少なくなり、やり直しも起こらない。結果として最短距離で成果にたどりつくような気がします。
丁寧にやりたいが、時間がかかるから難しいという人もいます。しかし、そうやって丁寧さを欠いた仕事をしていると、説明、修正、クレーム、確認という形で、何度も組織の時間を奪っていきます。そう考えれば、時間をかけるということはコストではなく、後戻りを減らすための投資といえるのかもしれません。
丁寧な仕事をする人や会社は、自分の仕事を自分の範囲でみるだけでなく、その先にいる顧客、同僚、会社全体まで含めて仕事を引き受けているように思います。だからこそ、手抜きしない。見ていないところでも丁寧にやるので、質が落ちない。「丁寧さ」が評価されない組織もあるようですが、丁寧さを大事にする人や組織が結局、周りから信頼され、長く続いていくようにも思います。
仕事を丁寧にするとは、会社を大切にすることであり、人を尊重することであると思います。そして、自分自身の価値を下げない選択。派手さはないのかもしれませんが、長く信頼される仕事する人や会社は、例外なくここが強いような気がします。丁寧な仕事というのは、最も地味ですが、最も再現性があり、最も裏切らない経営資源なのかもしれません。
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いきいき働くための仕事の姿勢
2026 年 01 月 16 日 11:11
顧客の不満
顧客満足の向上の大切さは以前から言われていますが、企業が顧客の生の声、本音を聞く機会は意外と少ないと思います。毎日お客様と接している営業の人などからするとお客様の気持ちはわかっていると言いたい気分になりますが、奥にある本音までわかっているかと言われると、実際はわからないというのがほとんどではないでしょうか。不満を感じていてもなかなか言いにくいのが日本人です。
実際のデータでも、不満を抱えていても、それをクレームとして企業に伝える人の割合はたったの4%。96%の人は不満を感じていても言わないそうです。確かに伝えるにもエネルギーがかかります。不満を感じたとしても黙っているだけ。あるいは、もう利用しなければいいという人がほとんどだと思います。
しかし、はっきりした苦情が届き、それで顧客が離れるなら対策も打てますが、知らないうちにお客様が離れているとすれば手立ても遅くなります。売上が下がる。リピーターが少なくなる。不満を抱えていた人がSNSに投稿する。不満をそのままにしていると、見えないところで損失が起こっていきます。お客様が少なくなってきたと市場や景気のせいだと勘違いしている間に、取り換えしがつかないことになってしまうかもしれません。
見えない不満による沈黙の離脱を解決するには、お客様の声に耳を傾けるしかないのかもしれません。
顧客満足日本一を何年も続ける旅館、和倉温泉の加賀屋さんには、昔から顧客の声をアンケートで収集し、それを何よりも大事にして改善を続けるという文化があります。
「日本一の旅館」という評判は確かにお客様が行きたくなるブランド力です。宿泊した人からの口コミで「一生に一度は加賀屋に泊まってみたい」というお客様が数多く存在します。しかし、期待が高いというのは集客には良くても、高い期待に応え続けるのは相当の努力が必要です。「普通の旅館と同じだった」「期待外れだった」という声にどう応えていくか。加賀屋さんは全社員で顧客の声に真摯に向き合われています。
接客係が宿泊客にアンケートをお願いし、集まったアンケートを幹部が集まる会議で不満の声をひとつひとつ読み上げ、改善できるものはその日のうちに改善するということを、毎朝、365日、しかも何十年も続けています。
96%の沈黙の不満をどう拾うかということは難しいことかもしれませんが、不満を言ってくださるお客様の裏側には同じような思いを持つ人がいる。1人顧客の声の裏側には24人の見えない不満客があるとも言えます。そう考えれば不満をいってくださるお客様は、それを知るための貴重な手がかりを与えてくだる人。不満の声は、サービスのどこをよくすればいいかを知るための「改善の地図」といえるかもしれません。
どの企業も、自社のお客様には満足してもらっていると感じていると思いたい。しかし、加賀屋さんのように企業のサービスが良くなり、期待が高まれば不満も増えていきます。同業他社のレベルがあがれば以前は「満足」と思われたことも「普通」という評価になる場合もありあす。不満に応えるだけでなく、よりよくなるためには「不満を集めにいく」というくらいになっていかなければ、ならないのかもしれません。
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素晴らしい組織風土づくり